サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
長谷部、香川、内田らに愛される男。
清武弘嗣、優しさから熱さへの転換。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/11/25 07:00
サウジ戦でPKを得た瞬間、清武はいち早くボールを手にした。長友らチームメートも万全の信頼を寄せてキッカーを託した。
熱く訴えかけたのは、断固たる決意があるからこそ。
そもそも、メディアへの提言など、百害あって一利なしと思われがちだ。選手からすればメディアがいつ、敵となって刃を向けてくるかもわからない。思うところがあったとしても、わざわざそれを伝えるのを敬遠する選手がいるのは、何ら不思議ではない。
しかし――。
持っているものを全て注がないといけない。問題と、正面から向き合っていかないといけない。そして、チームを引っ張っていかないといけない。
清武が熱く訴えかけたのは、彼の中に断固たる決意があったからではないだろうか。
前日に行われたロシアW杯最終予選のサウジアラビア戦で、日本は2-1で勝利をつかんだ。トップ下のポジションで先発した清武は、自ら得たPKを前半45分に決め、先制点をもたらした。
サウジ戦のPKは「全員で」喜べたゴールだった。
ボールがネットに突き刺さったのを確認した清武は、ピッチ内にいた選手たちを右手で呼び寄せながら、ベンチの方へ走っていった。左胸にプリントされている日本サッカー協会のエンブレムを、右手で叩いた。そして、ベンチの選手やスタッフ、ピッチにいた選手たちとで作られた歓喜の輪が解けた後、両手の人差し指をたて、満月の浮かぶ夜空を指した。
ゴールの瞬間、1人でベンチへ向かうのではなく仲間を呼び込むのが、いかにも彼らしかった。クラブでゴールを決めたときにエンブレムを叩いてチームへの忠誠を示す選手は多いが、代表チームでそうしたアクションをする者は決して多くない。そんな、自らの行動については、こう振り返っている。
「昨日の試合にかけている部分はすごくありました。チーム一丸となって戦っていた試合だったし、サポーターのみなさんもすごく期待してくれていた試合だったので、ああいうパフォーマンスになったなと。『全員で』喜べたゴールだったんじゃないかなと思います」