サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
長谷部、香川、内田らに愛される男。
清武弘嗣、優しさから熱さへの転換。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/11/25 07:00
サウジ戦でPKを得た瞬間、清武はいち早くボールを手にした。長友らチームメートも万全の信頼を寄せてキッカーを託した。
「キヨくんは絶対ボールを収めてくれる」(酒井宏)
あるいは、山口蛍も、昨年12月にセレッソ大阪からハノーファーへの移籍を決めたのは、清武の存在が決め手だったと話している。
2012年ロンドンオリンピックを戦ったチームの仲間で、ハノーファーで2年間ともにプレーした経験のある酒井宏樹は、その典型かもしれない。ハノーファーでの最後のシーズン、酒井は清武からこう言われている。
「スローインのボールはオレが絶対に受けにいくから、それまで待っとけ!」
酒井は当時から全幅の信頼を口にしていた。
「キヨくんは絶対にボールを収めてくれますからね!」
その人間性も、プレースタイルも、愛される。
ただ、これまでは彼の人間的な優しさが先に出てきてしまうことも多かった。以前、内田がこんなことを語っていた。清武がボールを持っているタイミングで、相手のマークを引きつけるために内田がサポートした時のことだ。
「シュート打って謝るヤツって、珍しい」(内田)
「オレが外を回ったときに、清武がシュートを打ったことがあった。そのあとアイツは、『あの時、アツト君、空いてましたよね? シュートを打ちたいから、打っちゃったんですよね』と言ってきたんだよ。それって、周りが見えているってことだよね。“すみません”みたいな感じで。そんな風に謝ってくるヤツって珍しい。どんどん打っていけばいいよって思うなぁ」
でも、今はそうではない。日本のために、やれることはすべてやる。必要なことは言うし、チームが良い方向に進むための労力を惜しまない。日本のために持っているものをすべて捧げようという気概が感じられる。
そういえば、今季から所属するセビージャで初めての公式戦を迎えたときにも、彼はこんなことを話していた。8月9日、UEFAスーパーカップでレアル・マドリーに延長戦の末に敗れて、ヨーロッパにわたってから初めてとなるタイトルを逃したあとのことだ。
「レアルだから負けてしょうがないということはなかったです。この前のボスニア戦もそうですけど、ああいう光景(※相手チームが優勝を喜ぶシーン)を見るのはすごく辛いです」
淡々とした語り口の中に真実は潜んでいる。