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堂安律「なんで出れへんのやろ」
ガンバが英才教育を施す天才の苦悩。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/23 11:00
ガンバが輩出する「天才」の系譜に連なる堂安律。テクニックが最大の武器だが、屈強な身体を備えていることも期待感を高める。
U-19アジア選手権では、守備に奔走してMVPに。
攻撃の幅、運動量に加え、守備も堂安にはまだまだ課題が多いポイントだ。守備の根本的な発想から、長谷川監督には叩き込まれたという。
「J3の試合では、相手を圧倒するような球際の強さを見せてほしいし、対人で負けてほしくないと言われました。自分でもそれは意識してやってきましたし、それがU-19の大会でも生きたと思います」
AFC U-19選手権バーレーン大会でU-19日本代表は初優勝し、2007年以来となるU-20W杯出場を決めた。堂安は5試合に出場し、FWではなく右MFとして起用されて守備に奔走した。長谷川監督に言われていたことをアジアで実践したのだ。その献身的な姿勢が評価されたのか、堂安は大会MVPを獲得した。
「アジア制覇しても、個人的には何も変わらないですね。プレーで何かができるようになったとかもないし、ただMVPって言われるプレッシャーだけです(苦笑)。
MVPも最初、冗談かと思いました。俺は、何もしてないですからね。1点しか取ってないし、守備はがんばりましたけど、それだけ。ほんまに何もしてへんちゅうねん(笑)」
照れ笑いを浮かべるが、攻撃の中心と自負していただけに守備だけが目立ち、やたらと持ち上げられることに気恥ずかしさを感じているのだろう。
もちろん守備がアジアで通用したこと自体はプラスに考えることができる。だが、堂安からすれば逆に攻撃で目立たないことが問題だった。アジアで90分を通して圧倒的な存在感を示すことができなかった。
苦手なこともある程度できるようにならねば……。
「律のプレーはムラがあるんです」
強化担当の山口智は、そう指摘する。
「スーパーな時はすごいけど、気分とか環境でプレーの差が激しくなる。J1の試合に出るためには、自分の好きな、できることをアピールするだけじゃなく、苦手なことやしんどいこともできる選手にならないといけない。どんなことにでも対応できる柔軟性と力強さを身に付けてほしいですね」