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松山英樹、アジア勢初のWGC優勝。
AONと違う道で世界ランク6位の意義。
posted2016/11/05 11:30
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Youichi Katsuragawa
精一杯のリップサービスだったろうか。それとも胸の底からこぼれた本音だろうか。
中国・上海で行われたHSBCチャンピオンズで、松山英樹が世界選手権(WGC)制覇を遂げた。丸山茂樹に並ぶ日本勢最多の米国PGAツアー通算3勝目。準メジャーとして認識されるWGC優勝はアジア勢初の快挙となった。
ただの1勝と表現するには惜しいほどの勝ちっぷり。2日目に単独首位に立ったまま、大会史上最大差となる後続に7打差を付けて72ホールを走り抜けた。年間4試合のWGC。試合形式の違うデル・マッチプレーを除いた残り2試合の最大差優勝は、メキシコ選手権が8打差、ブリヂストン招待が11打差。記録したのはいずれもタイガー・ウッズである。
異次元のゴルフを受け止めた18番グリーンには、表彰式を終えてなお余韻が残った。その場で欧州ツアーのビデオインタビューを受けた松山は、世界ランキングが上昇することについて問われてこう答えた。
「ランキングが上がっていくのは嬉しいですけど、ここからまだまだ上の人がいるので頑張りたいです」
松山と「AON」を単純比較するべきなのだろうか。
今大会の開幕直前に自己最高位のランク10位に入った時には「特に思うことはないですよ」と、素っ気なかった。松山の最大の目標はメジャー制覇以外にない。この指標がどの程度、彼の心を満たすものか。いまだ真意をはかれないでいる。
松山自身の満足感はさておき、日本オープン優勝、米ツアー・CIMBクラシック2位、WGC制覇の華麗なる3週間を経て、その世界ランキングは自己最高の6位に急浮上した。
日本人でこれまで、ひとケタの数字を果たしたのはAONだけだった。1987年に4位になった中嶋常幸に次ぎ、尾崎将司が'96年と'97年に5位に。青木功が'87年に8位に入った。今回松山は“世界のアオキ”の記録を塗り替えたことになる。
ただし、松山の現在地が3人のレジェンドと比較されるべきかどうかは検討が必要だ。
上海での練習日、松山のサポートチームのスタッフはある人物から声をかけられた。フランク・ノビロはニュージーランド出身の56歳。'90年代に主に活躍し、米ツアー1勝を含む世界で15勝を挙げ、現在はゴルフ中継の解説者として有名だ。