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大学ゴルフ部の仲間が気にする男。
岩田寛の「可愛さ」を知ってますか?
posted2016/11/03 08:00
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
「わざわざ来てくれたんですか? すみません。ありがとうございます」
サンダーソン・ファームズ選手権で優勝争いに絡み、5位になった岩田寛は、いきなりそんな言葉をかけてきた。もちろん選手がメディアにそんなふうに謝る必要もお礼を言う必要もないのだが、思わずそうするところが岩田らしさだ。
その挨拶は「遠くから来てくれて、すみません」だったのか、「駆け付けてくれたのに勝てなくて、すみません」だったのか、それとも「僕の取材に来てくれて、ありがとうございます」だったのか。彼は謙虚すぎるほど謙虚だ。
たぶん岩田は、自分があまり注目されていない、見られていないと思っている様子。だが、彼を応援している人は、彼が思っている以上に大勢いる。彼の話題は、彼が知らないところで彼が思っている以上に上がっている。
チームの仲間たちは岩田が大好き。そして、岩田を熟知する東北福祉大学ゴルフ部の仲間たちは「岩田はスルメみたいなやつ。噛めば噛むほど味がある」と評している。
昨季は不調で下を向いて歩くことが多かった。
初めての米ツアー本格参戦となった昨季は、苦戦しすぎたせいか、岩田の魅力はあまり発揮されることなく終わってしまった感がある。調子が上がらず、試合中は下を向いて歩くことが多かった。ミスショットに激昂し、自分自身に腹を立てたり、呆れたりしている姿を目にすることも多かった。
昨季の最終フェデックスカップランクは146位。翌シーズンのフル出場権が与えられる125位以内を逃し、下部ツアーの上位選手たちと混合で戦うウェブドットコムツアー・ファイナルズ4戦へ。
それでも、4試合の総合成績でトップ25に入れば、敗者復活的にフルシードが得られたのだが、「不運」もあって結果は36位で終わり、今季は準シード資格。
そんな経緯も手伝ってのことだったのだろうか。岩田は「わざわざ来てくれて……」と、すまなさそうに言った。
「いえいえ、来ますとも!」
思わず、そう返した。お世辞でも社交辞令でもない。だって私は、本当に岩田の戦いぶりが見たくて、その場に駆け付けたのだから――。