“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
U-19岩崎悠人は劣悪ピッチ大歓迎!
土グラウンドで磨いた俊足、粘り腰。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byAFLO
posted2016/11/05 08:00
この世代初のアジア王者メンバーの一員となった岩崎。次なる目標は年末年始に控える高校選手権・京都代表の座だ。
岩崎は異なるピッチに戸惑うどころか、完全に順応。
これは岩崎らの世代だけでなく、U-16世代にも大きな影を落としている。U-16日本代表の森山佳郎監督も「日本は人工芝で、どこに行っても『こんないい環境でやれる場所はなかなかない』という場所でしかやったことがない選手たちばかり。いつものように綺麗にプレーをやろうとすると、その瞬間に負けることもある。綺麗なピッチじゃないと戦えないでは話にならない」と強調していた。
9月に開催されたAFC U-16選手権の開催地はインドだったこともあり「インドのピッチはこんなもんじゃない。アジアや世界はそんな甘い環境ではない」(森山監督)と、チーム立ち上げ当初から敢えて劣悪なピッチを選択。選手達が順応するように徹底したほどだ。
日本が初優勝したAFC U-19選手権でも、全体的に芝が長く、堅い地面のピッチコンディションに慣れるまでに時間がかかった選手が何人かいた。
その中で、岩崎は初戦から決勝までハイパフォーマンスを維持し続けた。日本と大きく異なるピッチコンディションにも、戸惑うどころか、完全に順応していた。
「悪いピッチの方が、プレー精度が良くなるんです」
正直、これに対しては全く不思議に思わなかった。筆者は彼を高校1年生の頃から取材しているが、彼はピッチコンディションが悪ければ悪いほど、ずば抜けた存在感を示す選手だったからだ。持ち味であるスピードとストップ&ダッシュのキレは、大雨でスリッピーになった芝の上でも、ぬかるんだ土のグラウンドでもパフォーマンスが落ちず、逆にその状況に適したボールタッチの感覚やタイミングをつかみ、自分のスタイルをより生かすようなプレーをしていたほどだ。
当時、彼にピッチコンディションについての疑問をぶつけたことがあった。そうすると彼は笑顔でこう答えた。
「悪いピッチコンディションが大好きなんです。周りのみんなはプレーの精度が落ちるけど、僕はむしろ逆で良くなるんです(笑)。普通の時と違って、いろいろ工夫が出来て、楽しいんですよ」
さすがに、このコメントには驚いた。
ピッチコンディションが悪くてストレスを感じるどころか、逆に、楽しみながらプレーをしているというのだ。