セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
セリエAで選手vs.監督の親子対決!
シメオネ、ハジの息子も父超えなるか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/11/03 07:00
監督・エウゼビオと選手・フェデリコ。ダービーで直接対決したディフランチェスコ親子は何を思っただろうか。
父からの助言は「サッカーを楽しめ、ってことだよ」
初めてスタジアムで父を見たときにゴールを決めた父の背中を、フェデリコは今も追い続ける。
「パパから言われ続けてきたのは、たった1つ。『サッカーを楽しめ』ってことだよ」
父エウゼビオは、イタリア指導者界で台頭する気鋭の若手指導者だ。
現役時代にはスクデットを獲り、イタリア代表歴も持つが、国際的な知名度は今一つだった。ただし、師と仰ぐ攻撃サッカーの権化ゼーマンの教えを受け継ぎ、“半一流”だった選手特有の鋭い観察眼を持つ。地方クラブのサッスオーロを率いて5シーズン目、クラブ史上初めてのELでも健闘している。
男子を3人授かった。星一徹とちがい、彼らに「サッカーをやれ」とは決して強要しなかった。
「末っ子のルカはサッカーよりテニスが好きだし、次男のマッティアはサッカーの練習があっても学校の宿題があればそっちを優先する。俺は、まずサッカーが最優先のタイプだった(笑)」
アズーリを目指すフェデリコのもう一つの夢は……。
フェデリコが中学生の頃、普段は時間のとれない父エウゼビオがたった一度だけ、担任との保護者面談に出席したことがある。日頃のやんちゃが露見すると、怖れた通り、帰宅した父の顔は憤怒で赤黒く染まっていた。
ただし、彼はくどくどと説教はしなかった。「真面目に勉強しなければサッカーは禁止だ」という短い言葉が、息子の猛省を促した。
フェデリコが小学生の頃、移籍を繰り返した父に従って各地を転々とした。新しい土地に馴染めず苦労した時期に、毎日の練習を終えた後ともに過ごした時間が、フェデリコの幼心に父の姿と信頼を刻みこんだ。
セリエAにデビューし、初ゴールと初めての退場も経験したフェデリコは、U21イタリア代表でも頭角を現し始めている。いつかは父と同じように、フル代表でプレーするのが夢だ。
「でも、もう1つ欲しいものは奥さん。自分も早く家族を持ちたいんだ」
早熟なところも、若くして結婚した父エウゼビオに似たらしい。