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本田真凜と紀平梨花のライバル関係。
会場を熱狂の渦に巻き込んだ名演技。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2016/10/16 11:00
本田真凜(左)と紀平梨花(中央)のライバル関係は、日本女子の力をさらに高めていくに違いない。
紀平の演技の余韻が残る中、本田が見せた力。
会場が熱気に包まれる中、リンクを滑走していたのは最終滑走の本田だった。時折、手で胸を抑えるしぐさを見せる。
紀平の演技の余韻が残る中、曲が流れる。
最初のジャンプ、トリプルルッツを成功させると拍手が起こる。続くトリプルフリップ-トリプルトウループも成功。
その後は圧巻だった。流れるようなスケートと、力強さと儚さが漂う演技で場内を引き込む。後半の5つのジャンプ、ダブルアクセル-トリプルトウループ、トリプルサルコウ、トリプルループ、トリプルフリップ、ダブルアクセル-ダブルトウループ-ダブルループも成功。
ミスのない演技が終わった瞬間、両腕を何度も激しく振り下ろし、両拳をぎゅっと握りしめた。
観客席から「どっちだろう」が聞こえる大接戦。
「どっちだろう」
観客席から声が聞こえる。両者譲らぬ滑りの行方を見守る。
129.94。本田の得点は、自身の9月の記録を上回った。ただ、紀平の得点を下回った。
総合得点は……195.06。
フリーは、技術点で紀平が5.12上回り、演技構成点で本田が4.32上回った。そしてショートと合わせ、0.12のわずかな差で紀平が逆転優勝を遂げた。
終わったあと、紀平は笑顔を見せつつ、大会を振り返った。
「(トリプル)アクセルを降りた瞬間はうれしかったけれど、あとはまったく考えずに滑りました」
「順位はあまり気にしていませんでした。自分の演技をすることを考えていたので、それができてうれしいです」
「ライバルに勝ってうれしいとかはないです。自分の演技ができたことがうれしいです」
これらの言葉が象徴するように、無心を心がけての結果だった。