野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
暗黒時代の終焉と、三浦大輔引退と。
DeNAとファンが諦めと決別するまで。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/09/29 10:30
DeNAになってから右肩上がりで入場者は増え続けてきたが、今年は昨年からさらに5%以上伸びている。
“できる”と信じることは、容易いことではない。
2015年オフ。チームの空気を変えた中畑清が去り、新監督にラミレスが就任した。DeNAになって5年目、新監督は“勝つ”という明快で最も難しい結果を求められていた。
「戦える戦力は十分にある。あとは信じ続けることだ。負けが続いても、選手もファンも“自分たちは勝てる”と信じられるチームを作っていかなければならない」
就任後のラミレス監督のそんな言葉も空しく、開幕から苦しい戦いの連続だった。何をやっても上手く行かず、5月3日のヤクルト戦に敗れるとセ・リーグのすべての負債を抱え込む借金11。
「やっぱり」「もうダメだ」「結局、いつもと同じか」
自分たちが“できる”と信じることは、容易いことではない。それはあの負けを長く続けた時代だって、最初は選手も監督も、全員が勝ちたいと思っていた。しかし、それでも負けが続くと「またか」と黒星の闇に抗することもできず飲みこまれてしまう。そのことはラミレスが現役時代にも身をもって経験していたことだ。
「ベイスターズだから」で諦めてしまうファン。
ファンの方はもっと深刻だ。長い年月で染みついた諦めという名の魔物が、すぐに顔を覗かせる。「信じ続けることが大事」ラミレス監督の言葉を信じようとするも、目の前には覆しがたい事実がある。何故疑うのか。そこには考えることを放棄して、「ベイスターズだから」という言葉だけが説得力を持っていた。
それでも敗戦を続けるハマスタは何故か、連日ベイスターズファンで埋まっていた。そのことが不思議でならなかった。
「まだひっくり返せると信じています」
5月3日。山中に完封負けを喰らった直後、ラミレス監督はそんなコメントを残したが、どう信じようとしても強がりにしか聞こえなかった。