野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
暗黒時代の終焉と、三浦大輔引退と。
DeNAとファンが諦めと決別するまで。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/09/29 10:30
DeNAになってから右肩上がりで入場者は増え続けてきたが、今年は昨年からさらに5%以上伸びている。
5月から続いたジェットコースターのような日々。
しかし、そこからチームは息を吹き返す。
5月、梶谷復帰、石田健大が月間MVPの活躍、勝ち運に見放されていたルーキー今永も月間4勝を挙げ、最後は6連勝で5月28日には借金を完済。
6月、鬼門の交流戦。埼玉西武以外、カード3連勝か3連敗という極端すぎるアップダウンで5位まで落ちるも、7月、無敵状態に覚醒した筒香が打率.429、16本31点で月間MVPの活躍で3位に浮上。
8月、守護神の山崎康晃の不調。頭の阪神3連戦で打ち込まれると、続く中日戦でも逆転負けを喫する。8月の防御率15.12。信じられない数字が並ぶ。
8月25日には苦手の4位阪神に本拠地3連敗を喫し、0.5ゲーム差まで迫られた。このままずるずると後退するかと思いきや、翌日からの巨人戦で3連勝。
9月に入るとヤクルトが猛追してきたが、どうにか直接対決で勝ち越しに成功。“クリンチナンバー”という減り方もよくわからない未知の数字と戦いながら、19日の本拠地カープ戦に勝利し、はじめてのCS出場権を獲得。昨シーズン前半戦首位から最下位まで転げ落ちた同じ轍を踏むことなく、終わってみれば、7月12日に3位になって以降一度もAクラスから落ちることなく粘り切った。
数年前にはガラガラだったスタンドが青く染まる光景。
今シーズンも、この球団特有の浮き沈みの激しいジェットコースターはあった。しかも今年のそれはやけに振幅が激しい。カードごとに連勝連敗。ロペスも30打席無安打かと思えば爆発する。ファンは酔った。喜びと不安の合間をたゆたうアップダウンに。そして、ペナントレース後半に初めて味わうCS出場という緊張感に。
いつもと違う予感はあった。9月に入る頃になると、選手たちに話を聞けば「必ずCSに出ます」という言葉が聞こえてきていた。こちらがはじめてのCS争いに浮足立っていても、選手たちからは結果に一喜一憂せず、一戦一戦“CSに出る”という目標のために「自分たちは勝てる」と信じ、一丸となって戦っている空気が伝わって来た。
その空気はスタンドからも感じ取れた。連日多くのファンで埋め尽くされる横浜スタジアムは、8月の後半に昨年の大入り回数43回を更新した。わずか数年前にはガラガラだったスタンドが青く染められる光景。そして、その思い。