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石井琢朗が認める「背番号5」の後継。
DeNA倉本寿彦、2年目での3割死守を。 

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph byNaoya Sanuki

posted2016/09/09 07:00

石井琢朗が認める「背番号5」の後継。DeNA倉本寿彦、2年目での3割死守を。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

堅実な守備に加え、打撃もしぶとさを増した倉本。名曲で知られる石井琢朗の応援歌を継承できるか。

「応援歌、使わせてください」と相談されたことも。

 自身がつけていた背番号5の後継者に、対面のベンチから特別な視線を送っている。

「応援歌、使わせてくださいって言われてるからね。今年はがんばってるな、数字にもこだわってるんだろうなと思いながら見てますよ。うちの試合(カープ戦)になるとよく打つんだ。こないだもここ(マツダスタジアム)に来て、3本打って、タコって、また3本。6本も打っていった。守備も派手さはないけど、去年よりうまくなってるような気がするし。まあ陰ながら、というかね。俺の中では、やっとそういう選手が5番つけてくれたなあって」

 茅ヶ崎出身の倉本は、往時の背番号5、俊足巧打の遊撃手だった石井に憧れてプロの舞台へとたどり着いた。子どもの頃に耳にした応援歌を受け継ぐことは今も大きな目標だ。そして今季の開幕前、「レギュラーとして納得のいく結果を残すことができたら」という条件付きで、石井の“許可”を得ていた。

 倉本は言う。

「その時は、こんなに試合に出られるとは思っていなかったので、ここまではいい形でやってこれたと思います。成績も良くないと試合に出続けることはできないわけですし。僕が判断することではないので、応援歌が使えるかどうかは分からないけど、それぐらいファンに認めてもらえるような選手になりたいと思っています」

打率は「上下動するものだし、気にはしていない」。

 今季、打率が3割に乗ったのは4月23日。その日から今に至るまで3割を切ったのは6月15日の一日だけだ。調子を崩して大台を割り込みそうになると、ときにヘッドスライディングで内野安打をもぎとって3割のラインを死守してきた。

 そして最終盤戦、初のフル稼働に疲れは隠せず、ついに2割台に陥落かというところまで数字は落ちてきている。4試合連続ノーヒットで迎えた9月7日のスワローズ戦も2打席目までは凡退したが、ジャスト3割の第3打席で内野安打を放ち、再び踏みとどまった。

 倉本はこれまで、打率について「上下動するものだし、気にはしていない」と語っていたが、残り14試合、さすがにシーズンを3割で終えたい気持ちが出てきているのではないか。7日の試合後にそう尋ねると、少し間を置いて言った。

「個人成績もタイトルも、そこまでこだわりはありません。今、チームが勝てていて、それに少しでも力になれているのかなと思うので、ホッとしてる部分はありますね。いい緊張感があるし、充実しています」

【次ページ】 ファンはチームの勝利への貢献度を見ている。

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