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原口元気は、ここから更に速くなる。
2年間で作り上げた「壊れない体」。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2016/09/05 17:45
代表では、フィジカルと運動量を買われて中盤の底で起用されることが多い原口元気。その位置からでも、引いた相手にドリブルは効果を発揮するはずだ。
スピードを上げるために、止まれる体を作った2年間。
代表でも、所属クラブと同じ本来のポジションで起用してもらいたい気持ちは、もちろんある。
だがそんな想いはひとまず脇に置いて、目の前の戦いに全力を尽くす原口の姿が、敗戦翌日のグラウンドにはあった。
なにも、試合翌日の練習だけではない。原口は結果を出すためにずっと準備をしてきた。
2014年の1月から、ロシアW杯の開催される2018年6月を1つの目安として、肉体改造に取り組んできた。筑波大学の谷川聡氏と契約を結び、身体を強くし、攻撃の選手として大きな武器となるスピードを手に入れるためだ。
最初の2年余りは、谷川氏に何度も言われてきた。
「今は我慢するんだ」
スピードを手にするための長期的なプランのなかで、最初の約2年間は怪我をしないための身体作りだった。原口は以前、こう話していた。
「谷川先生いわく、怪我をするのが一番怖い、ということでした。スピードを出す前に、止まれる身体を作らないといけないということで。本当にスピードが出始めたときに止まれなくなって怪我をするから、まずはそのための身体を作るように言われました。2年かけて、地味にコアとかを鍛え続けて。だから、バランスが良くなった」
2014年の移籍以来、脚の故障は一度もない。
その効果は、確かにあった。2014年7月からヘルタ・ベルリンに移籍をしたが、怪我をしたのは接触プレーで右肩を負傷した1回だけ。脚の怪我で戦列を離れたことは一度もない。
最初の2年から2年半の間は、スピードをあげるためのタイヤではなく、スピードに耐えられるエンジンの部分を鍛えてきたようなものだ。もっとも、その過程でもトレーニングの成果は感じていた。
「実際に2年間で攻守のバランス、特に守備の部分で良くなったと思う。後ろにも下がれるようになったし、前にも出られるようになった。色々な部分で自分の身体の変化はわかるからね。もちろん、『オレは速くなりたいんです』と常に言ってきましたが、谷川先生からは『我慢するんだ』と言われてきて(笑)」