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五郎丸を包み込む熱狂と「赤黒」――。
新天地の強豪トゥーロン、その全貌。
posted2016/07/25 11:00
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph by
AFLO
「赤と黒」のツートンカラーを、ファーストジャージーに採用している港町のチームがある。
日本代表FB五郎丸歩が移籍する、フランス1部リーグ「トップ14」の強豪・トゥーロンだ。
本拠地は、南フランスの港町・トゥーロン。今年5月、サッカーU-23日本代表が参加した「トゥーロン国際大会」の舞台だが、地元のサッカークラブは国内2部に届かない。住民の誇りは、2013年から欧州を3連覇したラグビーチームの方だ。
チームは、2006年頃から本格強化に乗り出し、潤沢な資金で世界中の一流選手を集めてきた。タナ・ウマンガ(ニュージーランド)、ジョージ・グレーガン(オーストラリア)、ビクター・マットフィールド(南アフリカ)……。毎年のようにスター選手による補強を続け、今では控えにまで各国代表選手が溢れる。7月30日に予定されていたヤマハ発動機との親善試合をドタキャンするなど、なにかと話題に事欠かない。
はたして、トゥーロンの実情は――。そんな疑問を現地で晴らすことができたのは、昨年夏のフランスラグビー取材だった。
そこで浴びた鮮烈な印象は、まさしく「赤と黒」、だった。
南フランスというよりは、雑多な渋谷のイメージ。
マルセイユで乗り換えた高速鉄道がトゥーロン駅に着いたのは、7月31日、夜11時ごろ。
時計台を冠する瀟洒な駅舎を出ると、ぬるい夜風に頬をなでられた。街はすでに夜の底にあり、オレンジ色の街灯に照らされていた。地中海性気候の港町だけあって、どこか怠惰な雰囲気が漂っている。
駅周辺は区画整理されているが、海辺の旧市街周辺はいびつで、中空で街が雑然としている。南フランスというよりは、雑多な渋谷のイメージに近い。
日中、街を散策していると、あちこちで「赤と黒」に遭遇した。