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五郎丸を包み込む熱狂と「赤黒」――。
新天地の強豪トゥーロン、その全貌。
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byAFLO
posted2016/07/25 11:00
トゥーロンの入団会見に臨んだ五郎丸。赤と黒のポロシャツ姿に早大時代を思い出すファンも多いはずだ。
ファン御用達の飲食店が並ぶスタジアムへの“参道”。
旧市街を闊歩していたアラブ系の若者は、トゥーロンの赤黒ジャージーに身を包んでいた。カフェでは、赤黒のチームキャップをかぶった初老の白人男性を見つけた。
極めつきは、路地に駐まっていた“トゥーロン仕様”の白の小型車だ。夜中にも見かけたその車は、ボディ部分に赤黒のチームエンブレム(シール)を無数に貼っており、その異様さに目を引かれた。赤と黒の強烈なイメージが、脳裏に焼き付いた。
ヤシの木が立ち並ぶ海岸通りへ出向いた。サポーター御用達の飲食店が、ざっと4、5軒もある。この数と密集度は、トップ14でも特異だ。どの店も赤黒のチームグッズで装飾されており、部外者を寄せつけぬ雰囲気をかもす。
道の先には、約1万6000人収容の本拠地・スタッド・マイヨールがそびえていた。ホームスタジアムへと続く“参道”で、サポーターを自認する店が競い合っているという状況は、それだけ熱心なサポーターがいるということだろう。
五郎丸のお手本ウィルキンソンがクラブのレジェンド。
チームはリーグ有数の集客力を誇る。昨季トップ14のスタッド・マイヨールでの平均観客動員数は、1万2905人。ラシン92とのホームでの開幕戦には、1万4612人を集めた。トゥーロンが人口約16万人の小都市であることを思えば、トゥーロンサポーターの忠誠心たるや、推して知るべしだ。
トゥーロンを発つ前、クラブが経営に携わるカフェ(RCT Cafe)に立ち寄った。ショッピングモールの出入口に構えるそのカフェは、店内の目立つ場所に、クラブ最大の功労者のジャージーを飾っていた。
元イングランド代表の天才司令塔、ジョニー・ウィルキンソン。早稲田大学時代の五郎丸がそのルーティンを手本とした、世界的なキックの名手である。
2009年度からの5シーズン、トゥーロン躍進の原動力となったウィルキンソンは、現役引退後もコーチとしてトゥーロンに関わっている。今季もコーチ契約が続けば、五郎丸は伝説の名キッカーから直接指導を受けることになる。
先日、その2人を引き合わせた仕掛人を、静岡県磐田市に訪ねた。ヤマハ発動機の清宮克幸監督は、早大監督時代の2004年、ウィルキンソンを講師に迎えたラグビー教室の主催者である。