指導者は挫折を味わいながらも熱を失わなかった。

　校長が言ったように、人工芝のグラウンドに代表される環境面の充実を東福岡の強さの理由だとする見方がある。だが実際に目にすると、300人以上の部員がのびのびと練習するにはむしろ手狭だと感じる。

　主将の児玉慎太郎は「人数が多いぶん、紅白戦などでレベルの高い選手と切磋琢磨できる」と話していた。大所帯の部活には、メリットとデメリットが共存する。

　なぜ東福岡の部活は強いのか。志波は「選手、指導者、保護者会、学校。全てが日本一という同じベクトルを向いているからかな」と言った。森重は「勝てなかった17年間、『勝ちたい、優勝したい』という思いしかなかった」と苦い記憶を吐露した。

　それぞれの部に苦難の歴史があり、指導者は挫折を味わいながらも熱を失わなかった。そして時を同じくして、日本一の歓喜の瞬間は訪れた。

　東福岡の部活は強いのではない。正確を期すなら「今は強い」のだ。強さがこれからも続くかどうかは誰にも分からない。

（※2016年9月よりNumber本誌で連載が始まる予定です）

30名弱の部員数はバレー部としては標準的。ほとんどが県内出身者だ。取材当日も中学生が練習に参加し、藤元自ら基礎的な技術指導を繰り返していた。中学の県選抜で主将だった1年生の伊藤慎司は「練習時間は長くないけど、中身が濃い」と充実した表情で語った。

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