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川崎宗則、2日間だけのメジャー昇格。
「閃きたい」男は前を向き続ける。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byGetty Images

posted2016/07/17 08:00

川崎宗則、2日間だけのメジャー昇格。「閃きたい」男は前を向き続ける。<Number Web> photograph by Getty Images

今回の昇格では1打席のみのチャンスで三ゴロ。今季通算では3打数1安打となった。

キャンプ中、イチローのような打球に指揮官が感嘆。

 不思議なことが起こるシーズンだ。

 川崎がカブスとマイナー契約したのは1月。2月にキャンプ地入りした時は、週末で病院が休日だったことで身体検査の結果が出ず、それゆえに球団の施設を使えなかった。取材に訪れた記者を相手にキャッチボールをしたり、バッティングセンターに通う。キャンプが始まると毎朝、招待選手も含めた大勢の選手の前で景気づけに歌を歌ったり、「Motivational Speaker(士気を上げる演説)」を行なったこともあった。いつものペースに戻った時にはすっかり、クラブハウスの人気者となっていた。

 打撃練習中では強烈なライナーを右翼の防球ネットに突き刺した。過大な表現でも何でもなく、まるで「イチローのような強い打球」を連発し、「もう体がヘロヘロだよ」と疲労困憊の状態にもかかわらず、オープン戦では打率3割6分7厘という数字を残した。当時、カブスのジョー・マドン監督はこう言っている。

「トロントでの彼がエネルギーに溢れ、楽しませてくれる存在だっていうのはよく知られたこと。我々が知らなかったのは、彼が本当にいい野球選手なんだってことだったんだよ」

開幕直後の昇格では“カワサキ語”が一気に伝播。

 開幕直後の4月8日、怪我人の代わりにメジャーに呼ばれると、そこでまた、“カワサキ人気”が選手の間に伝播した。クラブハウス、フィールドの上、食事中、練習中、試合中と、時もところも選ばずに日本語+英語×スペイン語=カワサキ語が飛び交った。同15日に川崎がマイナーに降格した際、マドン監督はこう言っている。

「彼はまたいつかきっと、このチームを助けてくれるようになるさ」

【次ページ】 まるでマジシャンのようにチームを鼓舞する。

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川崎宗則
シカゴ・カブス

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