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守備でチームの防御率を変える男。
西武・永江恭平が捨てたプライド。
posted2016/07/14 17:00
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph by
NIKKAN SPORTS
不規則に弾んだ打球に反射的にグラブを出し、何事もなかったかのようにランナーを刺す。好プレーを好プレーに見せない、それが永江恭平の真骨頂だ。
長崎、海星高校からプロ入りして5年目。華麗で、かつ堅実な守備を武器に、入団以来、ライオンズファンから大きな期待を寄せられている永江は今、ショートのレギュラー取りに挑戦中である。
「ライオンズのショートはチームの顔というイメージ。松井稼頭央さん(楽天)、中島さん(宏之・オリックス)、そして田邊監督もですよね。すべてのプレーに関わるポジションですし、守るだけじゃなく、周囲への気配りも必要だと思います」(永江)
交流戦明けの6月26日の千葉ロッテ戦、第3戦にスターティングメンバーとして起用されると、その試合で今シーズン初ヒットを記録。その後は7月9日まで連続でスタメンとして起用された。6月26日からの5試合では4割以上の打率を残し、守備だけではなくバッティングでもアピールを続けている。
「今、打席で心掛けているのは、ボールに対してしっかり体を入れることです。無駄な動きをなくして変な方向に力が逃げないよう、ロスなく真っ直ぐに打ちに行くことを考えています。自分はインパクトの瞬間までけっこう体が動いてしまうタイプだったので、それを真っ直ぐにしよう、と。ボールをセンター方向にしっかり打ち返すことを意識しています」
上本達之に言われた一言が転機に。
好調の要因は意識の変化だ。今シーズン途中から、バットを一握り短く持ち、打席に入るようになった。遠征先で一緒に食事をした、チーム最年長の野手、上本達之が言った一言がきっかけになった。
「金子(侑司)が試合に出ていて、おまえが出られない理由はなんだと思う?」
金子は7月9日時点、72試合に出場し打率2割8分3厘、出塁率3割5分の成績を残している。今シーズンはバットを短く持ち、粘り強さを追求してきた。結果、打線の中で貴重なつなぎ役として活躍している。
その会話のあと、永江もバットを短く持って打席に立つようになった。