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“打倒PL”に燃えた'84年の大産大高。
最強の古巣に挑んだ監督の物語。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byNumber(Yasuhiro Yokota)
posted2016/07/01 17:10
1984年の大阪大会決勝、大産大高はPLの強力打線を相手に6回まで無失点。しかし、清原の打撃と桑田の投球の前に敗れた。
バッテリーに授けた対PLの秘策。
決勝当日、山本はバッテリーに秘策を授けた。相手の狙いを見抜くことに長けたPL打線への対策として、捕手の横田泰宏にこう指示した。
「サインとは逆のところに構えろ」
つまり、内なら外に構え、外なら内に構える。投手中本はミットのない場所めがけて投げるのだ。そして、狙い通り、強力打線を抑え、終盤まで0対0の緊迫した展開に持ち込んだのだが……。
結論を言えば、この時代の大阪に、KKのPLを止めることができた高校は存在しなかった。山本の大産大高も例外ではない。ただ、30年以上が経った今、あの挑戦の日々を振り返る表情は満足げだ。なぜか――。
あの決勝戦、終盤の土壇場、彼らの悔いを消す1つの決断があった。敗れても胸を張れるストーリーがあった。その詳細は、Number905号掲載の追憶ノンフィクション「幻の伝令」をご覧いただきたい。
もし、KKがいなければ……。
そんな第三者の同情など、何の意味もないことを彼らは教えてくれた。誇るべき敗北がある。負けたからこその人生がある。やはり、高校野球の夏は、敗れた者たちの夏だ。