欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
EURO優勝候補のはずだったベルギー。
アイルランドに快勝も依然迷走中……。
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byJean Catuffe/Getty Images
posted2016/06/21 07:00
この日のマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたベルギーのアクセル・ビツェル。2点目をヘディングで決めた他、MFとしてたびたび攻撃の起点として活躍した。
前に出てきたアイルランドに対し持ち味を発揮。
ベルギーは前半、1トップのロングを残しGKを含む10人が守備に徹するアイルランドの牙城を崩せずに苦労していた。しかし、失点したことで前に出ざるを得なくなったアイルランドに対し、MFアザール、デブライネらが徐々に持ち味の個人技を出し始める。そして、61分にこの試合のマン・オブ・ザ・マッチに輝いたビツェルのゴールで点差を2点に広げると、70分には再びロングカウンターからこんどはアザールが右サイドを切り崩し、ルカクが1点目同様にゴール左隅に流し込んだ。
初戦のイタリア戦ではほとんど仕事をさせてもらえなかったルカクは「あれで目が覚めた」と2ゴールの活躍。一方の、マルク・ビルモッツ監督は敗れた第1戦からメンバー3人を入れ替えながら、沈黙していたルカクを残したことについて「彼に自信を与えたかった」と言及している。ベルギーにとっては3-0と快勝し、終盤にはそのルカクに代えて初戦出番のなかった同じくCFのベンテケを起用できたことも、今後の戦いを見据えれば理想的だったかもしれない。
前半は完全に攻めあぐねていた。
ただ、ベルギーにとって結果オーライだったことも確かだ。
「先制点を取るまでは苦しかった。1点取れたことで、そのあとは楽に追加点を挙げられた」
ビツェルの言葉は、前半は完全に攻めあぐね、後半に得点を重ねることができたのはアイルランドの前に出る姿勢と無関係ではなかったことを示している。加えて、イタリア戦ではチャンスになりかけた場面をことごとくファウルで止められるシーンが目立ったが、アイルランドのクリーンで、正直な守備に救われたともいえる。
2ゴールのルカクにしても前半はまったく存在感がなかった。ルカクが光ったのは後半のスペースを手にした時間に限られ、チームとしても個々に才能あるタレントは揃ってはいるものの、それがチーム全体のなかで効果的に生かされているかといえば、そんな風には思えない戦いぶりだった。アザールにしても、デブライネにしても前半のクローズな展開のなかでは、ただのテクニシャンに過ぎなかった。
守備にしても、前半のアイルランドはロングへの縦パス1本が唯一の攻め手だったにもかかわらず、ベルギーの守備陣が何度かスピードで遅れを取ったシーンが目についた。高さには強いが、スピードには難がある。イタリア戦でもジャッケリーニにやられたのは決して偶然ではない。この点は、快勝したとはいえ、ベルギーにとっては課題といえるだろう。