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遠藤航の濃密なキリンカップ59分。
勝利の陰の反省と、敗戦の中の収穫。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2016/06/11 08:00

遠藤航の濃密なキリンカップ59分。勝利の陰の反省と、敗戦の中の収穫。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

A代表でも着々と出場実績を積む遠藤航。この夏にはリオ五輪も待っている。

ハンディをカバーする工夫と柔軟性。

「空中戦は相手の飛ぶタイミング、姿勢や身体の向きをしっかりと見て、そこから相手を上回れるタイミングで自分も体勢やステップを整えて競りに行く。CBのときはよりその意識が重要になるし、ボランチだと後ろに味方がいるので、相手を自由にさせない競り方になる。状況やポジションを見ながら、考えて対応している」

 このコメントをもらったのは4月のJリーグ名古屋戦の時だが、彼は199cmのシモビッチと対等に渡り合い、競り合いで一切の自由を与えなかった。

 CBとして、自らが背負うハンディをカバーする工夫。そして、それをボランチという別のポジションで活かす柔軟性。彼にはそれができる頭脳と技術がある。冷静に自己分析と状況分析をし、適した対応を取る。そして、これまでU-19やU-23などで積み上げてきた国際経験、Jリーグでの経験を活かしながら、進化を遂げてきたからこそ、日本代表のステージに上がることができた。それは想像以上に困難で、称賛に値することだ。

真っ向から身体を入れてしまった。

 だが、あのシーンでは自分の生命線をおろそかにしてしまった。

「自分のタイミングじゃないタイミングで身体を当てられてしまった。自分の中ではそのままランニングしてもう一歩縦に入ろうと思っていたのですが、その前に相手が身体をぶつけてきて、ちょっと外にボールを置かれた分、足が届かずに、シュートを簡単に打たせてしまった」

 そう語ったように、追いついた瞬間、彼はいつもの相手に潜り込むような寄せではなく、真っ向から身体を入れてしまい、そこで弾き返されてしまったのだ。

 さらにもう一つ要因があった。

「途中交代のしんどさ、CBとボランチの違いもあって、最後に足が出なかったのもある。頭では分かっていたけど、そういうところで身体がついてこなかった」

 CBのスプリントからの守備と、ボランチのスプリントからの守備の距離は大きく違う。特にこのシーンのようにDFラインの裏への対応をする場合は、スプリントの距離は一気に伸びる。大量リードした中で入ったゆえに、そのペース配分も冷静に考えることができなかった。

【次ページ】 「教訓を生かす」という才能。

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