“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
遠藤航の濃密なキリンカップ59分。
勝利の陰の反省と、敗戦の中の収穫。
posted2016/06/11 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takuya Sugiyama
学ぶべきことが多く、手応えを掴めた59分間だった――。
キリンカップで、遠藤航は2試合に出場した。初戦のブルガリア戦は76分に長谷部誠に代わって、決勝のボスニア・ヘルツェゴビナ戦では後半の頭から柏木陽介に代わって出場した。いずれともポジションはボランチ。彼はこの59分間で、収穫も反省も含め、非常に濃密な時間を過ごすことができた。
ブルガリア戦で彼が経験したのは「反省」の方だった。6-1の大差で投入されると、「ああいう雰囲気で入るのは、安パイじゃないけど、しっかりゲームを終わらせる動きを一番求められるけど、それをやった上でもっと点に絡みたいという思いで入ったので、縦の運動量を多くして、前に行こうと思った」と、投入直後から運動量を上げてのプレーを選択した。だが、その意識が重要な守備面に影響を及ぼしてしまった。
シュートスペースを作られる痛恨のミス。
82分、日本のミスからボールを奪われ、DFラインの裏を狙ったパスが送られると、抜け出したMFチョチェフに全力疾走で追いついたのは遠藤だった。持ち前の高い危機察知能力を活かした素晴らしい反応だったが、問題はその後だった。球際に激しく行こうとした瞬間、相手に身体を当てられ、シュートスペースを作られてしまった。
「最初は寄せて遅らせようと思っていたのに、最初に身体を当てられたことで距離があいてしまって、後は寄せきれなかった」
と唇を噛んだように、チョチェフに冷静にゴールを決められてしまった。
身体の当て方、球際に関しては、ある意味彼の生命線でもあった。身長178cmと、もともと体が大きい方ではなく、自分より高さがありフィジカルもある相手には、空中戦もフィジカルコンタクトも球際も、真っ向勝負では厳しいものがあった。しかし、多くの選手たちがそれらを理由に、CBのポジションから離れていったり頭打ちになっていく一方で、遠藤はその問題から一気に突き抜けていた。