セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イグアイン、セリエ記録の36得点!
エースで、指揮者で、シンボルだ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2016/05/21 10:30
セリエAで誰も決めたことが無いシーズン36点目を決め、イグアインは叫んだ。もちろんダントツの得点王だ。
チームの全てはイグアインのゴールのために。
リーグ屈指を誇った圧倒的なボールポゼッションも、ハイプレスからのショートカウンターも、すべてはフィニッシャーであるイグアインへラストパスを供給することが目的だった。そのことを確信犯的に理解していたサッリは、最初からエースと心中するつもりだった。
'09年から都合4シーズン、ナポリを率いた元監督マッツァーリは、当時のエースにFWカバーニ(現パリSG)を抜擢した。期待に応えたカバーニはゴールを量産し、'12-'13年シーズンには当時のクラブ記録となる29点を挙げ、得点王にもなった。
ただし、頑固な戦術家マッツァーリは、カバーニ1人へ無理にボールを集めることを最後まで嫌った。特定のスコアラーに依存せず、自らの矜持である戦術3-5-2によって勝つのだ、という信念に重きを置いたためだ。
結果として、彼らのナポリは真剣にスクデットを争うレベルにはついぞ届かなかった。
ユーベの若きエースも「ちょっと妬けるぐらい凄いね」。
対して、サッリとイグアインが牽引した今季のナポリは、'90年以来の“冬の王者”を戴冠し、序盤の大混戦を抜け出して、シーズン中盤にカンピオナートの首位を走った。
地元ナポリを除く各地のスタジアムで、月曜日のバールで、イグアインの名は敬意と畏怖をもって語られた。今季、エースFWのゴールラッシュとともに、ナポリっ子たちはスクデットの夢を確かに見たのだった。
19ゴールを挙げて今季の得点ランク2位に食い込んだのは、ユベントスの若き新エースFWディバラだが、飛ぶ鳥を落とす勢いの若武者も、6歳年上の同胞イグアインには今のところ脱帽するしかない。
「ゴンサロ(・イグアイン)は僕より上手いよ! アルゼンチン代表でいっしょに練習してみたら、彼の右足に惚れ惚れさ。どんな位置からでも相手ゴールを捉える能力は、ちょっと妬けるくらい凄いね」