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イグアイン、セリエ記録の36得点!
エースで、指揮者で、シンボルだ。
posted2016/05/21 10:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
モノクロームの古い記録が、爽快な水色へと塗り替えられた。
14日のセリエA最終節フロジノーネ戦で、ナポリのFWイグアインはトリプレッタ(=ハットトリック)を達成。今季リーグ36点目を挙げ、セリエAシーズン最多得点記録を66年ぶりに更新した。
「(新記録となる)3点目を決めて、チームメイト全員が俺に向かってダッシュしてくるのを見たとき、言葉にならないほど感動した。記録を達成できて本当に嬉しい」
伝説のFWノルダールが、従来の記録である35得点を挙げたのは、第2次世界大戦後間もない'49-'50年シーズンのことだ。第4回W杯ブラジル大会でウルグアイが優勝し、F1世界選手権が始まったのが、1950年という白黒画像の時代だった。
本拠地サン・パオロで、イグアインの劇的な偉業達成を目撃したナポリっ子たちの興奮は絶頂に達した。隣席の見知らぬ者同士が歴史的瞬間に立ち会った感激に熱い抱擁を交わし、キスの雨嵐が吹き荒れた。
ガゼッタは禁断の10点満点で「神々しい」と。
試合翌日の伊紙『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、イグアインへ禁断の最高評点「10」を謹呈。「神々しいまでに完璧」と評し、カルチョ史に新たな金字塔を打ち立てたアルゼンチン人ストライカーへ最大級の敬意を表した。
辛口で知られる監督サッリとエースFWとは、強い信頼関係で結ばれている。
1年目の異色指揮官は、イグアインのゴール数を昨季から倍増させただけでなく、ナポリを2位に導き、来季のCL直接出場権も獲得した。
イグアインが一人で挙げた36ゴールは、リーグ2位のチーム総得点数80のうち、45%を占める。彼の決勝ゴールが勝ち点3をもたらした試合は、15もあった。
4-3-3を用いて魅惑的な攻撃サッカーを貫いた今季のナポリはその実、イグアインありきのチームだった。