“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“A代表に近いクラブ”レッズの新人、
伊藤涼太郎のビッグマウス台詞集。
posted2016/05/03 08:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
J1リーグファーストステージ第9節・浦和vs.名古屋。4-1の浦和リードで迎えた73分、42,547人もの観衆が詰めかけた埼玉スタジアムが一斉に大きく沸いた。
ゴールが生まれた訳ではない。
それは1人のルーキーがデビューを果たした瞬間だった。
ADVERTISEMENT
今季、作陽高校から入団したMF伊藤涼太郎は、この年でただ1人の高卒入団選手だった。
「ずっと出たくてウズウズしていた。点差が開いたときは、僕の名前が呼ばれるんじゃないかと凄くワクワクしたし、準備をしていました」
大歓声に臆するどころか、これから始まる時間に心を躍らせていた18歳の青年。緊張はしていたが、それを凌駕する期待が、彼の心を支配していたのだ。
ピッチに立つと、スタートはボランチとしてプレーし、投入直後のファーストプレーでDF槙野智章からのパスを冷静に捌くと、その1分後にはセンターライン中央付近でボールを受け、左サイドのスペースに飛び出した関根貴大にロングパスを供給した。関根のスタートが遅くて僅かに合わなかったが、通っていれば一発で局面が変わる精度の高いパスだった。
「サイドへの展開のボールは、ペトロビッチ監督も凄く評価してくれる部分なので、ボランチではそれを出したかった。なので、ボールを受けたら近いところより遠くを見ることを凄く意識していた。緊張はしたけど、視野は確保できた」
試合後にそう語ったように、堂々たるファーストプレー。そして、82分には再び中央から左サイドの関根へミドルパス。これは関根の足下にピタリと渡る。冷静なプレーを続ける伊藤は、83分にFW興梠慎三に代わってMF青木拓矢が投入されると、ポジションをボランチから本来のポジションであるシャドーに移した。
すると、今度は「ゴールに近いポジションになったので、点を取りたい。結果を残したいと思った」と、積極的にゴール前にスプリントし、89分には青木のスルーパスを受け、縦に仕掛けてから左足シュートを放つ。これは惜しくもDFにブロックされたが、ゴールへの積極性を十分に披露できていた。
「すごく『自分』というものを持っている」
「緊張はしていたけど、凄く楽しい気持ちもあって、ボールにもっと触りたいという気持ちでした。あと点を取りたい気持ちも強かったので、もっと前に行って、点を取りたかった」
このメンタリティーこそ、伊藤涼太郎が周りから一目置かれる所以だ。チームメイトのMF梅崎司は、伊藤をこう評している。
「涼太郎は凄く『自分』というものを持っている。良い意味で強気というか、臆さないと言うか。そういう強い気持ちを持っているし、実力もある。凄く楽しみな選手」