“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
“A代表に近いクラブ”レッズの新人、
伊藤涼太郎のビッグマウス台詞集。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/05/03 08:00
ペトロビッチ監督が、「あとは守備を学べばすぐにでも代表クラス」と賞した伊藤。
「恐怖は感じませんでした。むしろ楽しくなった」
だが、彼の心は揺るがなかった。
それは筆者が「(レッズへの入団が)想像を超えていたことに気づいた時、恐怖は覚えなかったか」と彼に質問をぶつけてみたときの返事で感じ取れた。
「恐怖は感じませんでしたよ。むしろ、なんだか楽しくなりましたね。まず自分がこんなレベルの高い環境でやれることは幸せだと思いました。素晴らしい選手からどんどん学んで行かないといけないし、逆に選手から学ぶだけでなく、ポジションを奪わないと試合には出られない。普段の練習からでも、試合に出ていない選手たちの悔しさがプレーににじみ出ているんです。槙野さんなどレギュラーの選手も、自分が(試合に)出ていることが当たり前とは一切思っていなくて、相当な気合いが入っている。
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そこで生き残っていくためには、『ルーキーだから』ではなく、僕も試合に出られていない悔しさをプレーに出さないといけない。日々の練習からスタメンの選手に対する気迫がないと成長しないんです。今のレッズの強みはそこにあると思うし、それがレッズの強さの秘訣だと思っています。自分はそれに取り残されてはいけないし、やれるという自信はあります」
高卒ルーキーの中で一番最初にゴールを決めたい!
アディショナルタイム5分を含めて、伊藤の名古屋戦でのプレー時間は22分間。アシストもゴールも記録出来なかったが、デビュー戦で本職では無いボランチと、本職のトップ下の2つのポジションを十分こなしてみせた。
「4万人以上のサポーターが詰めかけて、その方たちはお金を払って来てくれている。その上で僕もサッカーをやってお金をもらっているので、ワンプレーワンプレーの責任感が絶対にある。だからこそ、デビューしたことに満足せず、もっと皆さんに観てもらうのに相応しいプレーを見せたい。浦和に来て3カ月。僕は浦和のサッカーに合うと思っている。その一方で、このチームにいられることは当たり前のことではないので、常に危機感を持ってプレーをしたい」
このデビュー戦の経験は、彼のサッカー選手としての自覚を間違いなく底上げさせた。「今日出場できたことを大事にして、次の出場機会があれば、今日よりもだいぶ落ち着いてプレーすることが出来ると思うので、そこで結果を出したい。まだ(他のJ1クラブで同期の)高卒ルーキーは誰もゴールを決めていないので、僕がいち早く決めたいと思っています。狙っています」
浦和の赤き新星は、ルーキーらしい貪欲さと、ルーキーらしからぬ冷静な観点を併せ持つ。この洗練されたパラドックスから紡ぎだされる、彼の言葉とプレーは、これからさらに注目が集まっていくだろう。