野球場に散らばった余談としてBACK NUMBER
「フクハラサン、元気にしてますか?」
米国で大活躍、元阪神・呉昇桓の仁義。
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byAP/AFLO
posted2016/04/22 10:40
阪神時代より球速が上がったオ・スンファン。4月21日現在、カージナルスで7試合連続無失点記録を更新中である。
「みんな、友達だから一緒に」
ソン・サンは檀国大でバッテリーを組んだ間柄。申し訳なさそうに、こんな思い出を語ってくれた。
入学早々、スンファンは右肘を手術し、リハビリに明け暮れる日々だったという。当然、長い間、チーム本隊から離れていた。
「2年生の8月頃、野球部の同僚みんなで学校から逃げたんです。練習もキツイし、寮も暑すぎるし……。スンファンはリハビリが終わったばかりで、これから選手としてプレーできるのに、一緒に逃げました」
大学内で大問題になり、事情聴取された。スンファンはコーチから「いままで手術して、リハビリして、何もやっていないのに、お前もなぜ逃げるんだ?」と問われて、こう返したのだという。
「みんな、友達だから一緒に」
この男の心根を表す言葉だろう。
安藤優也も一目を置く、呉昇桓のタフネス。
阪神でも心意気に生きた。
来日1年目を終えた'14年の12月に、慰労を兼ねた投手会がソウルで行われた。ホストはもちろん、韓国No.1守護神だ。
プロ野球選手は個人事業主で、一匹狼が多い。それでも、韓国から渡ってきた助っ人を中心に、一体感が生まれていた。
安藤優也も、スンファンと多くの時間を過ごし、野球観を分かち合う1人だ。
「すごく熱いヤツだよね。体もすごくタフだし、精神的にもすごく強い。クローザーとして、本当にスゴイものを持っている」
若い頃、3年連続開幕投手を務めた安藤もベテランになり、セットアッパーとして日々、準備する。その過酷さを知るからこそ、失敗したときの立ち居振る舞いが目につくのだ。
金本阪神が模索する、必勝の継投パターン。
金本阪神は今季、新たな必勝継投を模索中だ。
16日の中日戦では、今季から加入した新守護神のマルコス・マテオがサヨナラ打を許し、翌17日にはセットアッパーの柱である福原がサヨナラ本塁打を浴び、その後から二軍で調整に入った。一軍に昇格したばかりの新助っ人ラファエル・ドリスは19日ヤクルト戦で快投デビュー。
誰もが、持ち場で奮闘しているのだ。