ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
“チーム松山”、3度目のマスターズ。
キャディとトレーナーが語る関係性。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/04/04 10:30
最近はゴルファーが「we」と複数形の主語で語ることも増えてきた。ゴルフは一人ではできないのだ。
2人の向上心は、松山本人に追いつくために。
しかし驚いたのは、スピースの徹底した肉体管理プログラムだった。食事や血流の細かいチェックを行い、スマートフォンのアプリに記録。日々変化する肉体に合った、その時々に吸収すべき食材や運動メニューなどがメールで提示される。
科学的根拠にもとづいた合理システム。松山のカラダ作りにもすぐに取り入れるべきかどうかという判断は、これまで培ってきた経験と、どう融合させるかという問題がつきまとう。ただ、飯田トレーナーは「こんなことまでやるのか……と思いましたね。“考え方”という面ですごく参考になった。すべてを真似していては進歩がないけれど、自分自身のスキルを突き詰めるためには、いままでの感覚を大事にしながら、経験値を上げる必要がある」とうなずいた。
松山を世界トップレベルの選手に仲間入りさせるために陰で支える2人は、アメリカで謙虚に学び、ツアーに溶け込もうとしてきた。
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その行動が、選手が放つ年間何千ストロークのうちの1打を少なくする保証はない。しかし彼らをそうさせるのは、「知りたい」という、それぞれの職におけるプロとしてのシンプルな向上心。そして、もうひとつある。
ふたりはそれぞれ別々の場所でこう言った。
「英樹に追いつくために必死にやんなきゃ、あいつについていけない。もうひとつ上のレベルで、ヒントを与えられる関係になるように頑張らないと。英樹に僕が追いつこうとしている」(進藤)
「英樹についていかないと。何か聞かれて『ちょっと待って、調べるわ』ということが常にある。勉強し続けて、情報量や不安を持っておかないと。進化し続けないと取り残されちゃう」(飯田)
彼らの焦燥感を掻き立てるのは、松山本人の目標と意識の高さに他ならないのだ。
マスターズに、チーム松山が三度帰ってくる。
ゴルフは言うまでもなく個人スポーツ。ただし、ツアーを転戦するプレーヤーにとっては、身近なサポートスタッフたちの力を結集したチームプレーでもある。海外を渡り歩くならなおさらだ。試合が終わる週末にそれぞれが自宅に帰るわけではなく、長い期間、寝食をともにする。コースやトレーニング施設だけで顔を合わせる関係ではない。意見の食い違い、ぶつかり合い。それぞれの小さなミスも互いで消化していく。
進藤キャディは「英樹はやっぱり繊細だし、敏感だから。こっちの意識レベルが低いと分かっちゃうと思うんですよ。そうなった瞬間に、残念に思われたらショックだし。むしろ期待されて怒られるほうがいい」と続けた。馴れ合いの結束力ではなく、個が強くならなければいけない――というのは、選手個々の“チーム”も同じである。
4月第2週。今年も彼らはオーガスタに帰ってきた。
松山がプロになってから3度目、チーム松山が結成されてから3度目のマスターズだ。
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