ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
“チーム松山”、3度目のマスターズ。
キャディとトレーナーが語る関係性。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/04/04 10:30
最近はゴルファーが「we」と複数形の主語で語ることも増えてきた。ゴルフは一人ではできないのだ。
メジャー15勝、通算165勝の「キャディ界の神」。
実は進藤さんも英会話はまだ発展途上。だから隣に通訳代わりの人間を呼び、あらゆる質問をぶつけて、真剣にウィリアムスの言葉に聞き入る。
「日本ツアーでやっていた僕からしたら、スティーブはキャディ界の神みたいな人」だという。
「彼がいろんな選手と何回優勝したか知っていますか? タイガーを含めてメジャーで15勝以上、全部で165勝以上だそうです。この世界には“1勝”を遂げるまでにすごく時間がかかるキャディもいる。その違いを生むのは何か? 優れた選手たちが、それだけスティーブを選ぶ理由があると思う。それを知りたかった」
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プロゴルファー以上にコースを歩くのがキャディである。試合前の準備段階はもちろん、同じ会場で、年によっては別の選手に付く場合もあるからだ。だから、経験がものを言う。芝質やハザード、グリーンの癖……学ぶべきところはいくらでもあった。
「アダムがパターをする直前に、スティーブは『ああ、これは外れるな』なんて顔をしていることすらある。構えに入る前の段階で、気づいているんですよね。すごいとしか言えない。ただ、どれだけ仕事に対して打ち込めるかということを彼はいつも話してくれる。いい仕事をする人が考えることは、世界共通なんだと思った」
周囲に興味を持たれ、仲がいいことはプラスになる。
先日も進藤キャディは、ダスティン・ジョンソンのキャディと食事したばかりである。そんな彼だからこそ、他の選手やキャディと笑顔で立ち話をするシーンは、むしろ松山よりも多いかもしれない。そしてそれは、松山のシャイな性格を把握しているが故でもある。
2勝目を挙げた今年2月のフェニックスオープンでも、優勝争いの際に多くの選手に「Play,well!」「Good Luck!」と声をかけられてスタートした。進藤キャディに言わせれば、そういった環境づくりも仕事のひとつだという。
「日本でやる感覚に近づけていくのが嬉しい。英樹が周りの人に興味をもたれている証拠じゃないですか。関わりのない人を助けてくれるほど、勝負の世界はおしとやかではない。ゴルフ場の外でも会う関係を作ることが、どこかで役に立つかもしれない。例えば情報ひとつをとっても、仲のよしあしで教えてくれたり、そうでなかったりもする」
一匹狼では、居場所は限られる。彼は選手が放つ1打とは別次元のサポート力も磨いてきたのだ。
「あんなに熱心に話を聞いてくるキャディはそういない。彼はきっといいキャディになる」というのは、何を隠そうウィリアムスの言葉である。