セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
“人格者”でなければ引き受けない?
コンテ後のイタリア代表監督は誰に。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/03/26 10:30
ユベントスでセリエAの3連覇をなしとげたコンテ。引く手あまたの中から次の職場に選んだのは悩める名門チェルシーだった。
対抗馬のカペッロやラニエリは現実的ではない。
8年前、ドナドーニはイタリア代表を率いてEURO2008へ出場した。アズーリは、決勝トーナメント1回戦でスペインに敗れ、代表監督ドナドーニは大会後辞任へと追い込まれた。
しかし、敗退はあくまでPK戦という決着方式によるものだけで、当時若かったドナドーニには“代表監督として正当に評価されなかった”という不信感が残った。ドイツW杯を制した前監督リッピの再登板を望む声に抗いきれなかったのも事実だ。
そこから8年、ドナドーニはナポリや地方クラブでセリエAの最前線に立ち続けた。選手たちに最も近い現場感覚を持っている。
ボローニャとの契約は'17年夏まで残っているが、円熟味を増し、清濁併せ呑む度量を備えたドナドーニが代表へ再挑戦する機は熟した、と見る向きは多い。
ドナドーニの対抗馬には、イングランド代表やロシア代表を率いた名将カペッロか、今季のプレミアリーグを席巻するラニエリ(レスター)の2人とされている。
ただし、要求の厳しさで知られ、富も名誉もすでに十分手にしている69歳のカペッロが、批判されることはあっても得る物わずかな母国の代表監督の座へどれほど執着しているかには強い疑問が残る。
また、奇跡のプレミアリーグ制覇へひた走る64歳のラニエリも、最近「レスターに残る」とコメントした上に、晴れ舞台である来季のCLで采配を振るうチャンスを捨てるとは考えにくい。
新監督のギャラも前任者の半分という悪条件。
現在フリー組のプランデッリ(前ガラタサライ)やマッザーリ(前インテル)、ベントゥーラ(トリノ)といった他の候補者たちも現実味に欠ける。
新監督のギャラは、手取りで年俸350万ユーロをもらっているコンテの約半額になる。渋ちんな上に、どうにも小役人っぽさが消えないタベッキオ会長からは、こういう大事なことをポロッと漏らす悪癖が消えない。協会からのサポートも、あまり期待できそうもない。
さまざまな条件に鑑みるに、実際のところ要請を引き受けそうなのは、人格者ドナドーニぐらいではないか、と思えてくるほどだ。