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“人格者”でなければ引き受けない?
コンテ後のイタリア代表監督は誰に。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/03/26 10:30
ユベントスでセリエAの3連覇をなしとげたコンテ。引く手あまたの中から次の職場に選んだのは悩める名門チェルシーだった。
実はコンテはサッカー賭博の判決を待つ身。
現監督であるコンテには、EURO本番直前の5月に、グラウンド外で重要な戦いが待っている。相手はイタリア司法だ。いわゆる“カルチョ・スコンメッセ(サッカー賭博)事件”の法廷闘争は、実はまだまだ終わっていないのだ。
2010年の冬に最初の捜査が始まった国際サッカー賭博事件は、EURO2012直前の元イタリア代表FWシニョーリらの大量逮捕や、協会トレセンでの代表合宿への立ち入り捜査といった異常事態などを経て、当時ユベントス監督だったコンテにも火の粉が降りかかった。
主要容疑者による供述から、セリエBシエナ時代の八百長関与疑惑を疑われたコンテが、'12-'13年シーズンに10カ月間の資格停止処分(※後に4カ月へ軽減)を受けたのを覚えている読者も多いはずだ。
ただし、あの処分はあくまでスポーツ(司法)界に限った内輪の処罰で、事件を捜査するクレモーナ地方検察は、一連の事件を刑事裁判にも持ち込んだ。被疑者が100人を超える取り調べは長丁場となり、昨年の2月になってようやく予備審理が始まった。
コンテの弁護団の尽力によって、現代表監督への嫌疑は不起訴か、悪くとも罰金処分で済む方向である、と判明したのはつい今月上旬のことだ。略式裁判の判決が下るのは、おそらく5月上旬頃と見られている。
EURO出場国は今大会から24カ国に増えたが、指揮官が判決を待つ身で本番に備える国がイタリア以外にあるだろうか。
EUROのグループは難敵揃い。
3月のテストマッチ連戦に、コンテは若手FWベルナルデスキ(フィオレンティーナ)とナポリの躍進を担うセントラルMFジョルジーニョを初招集した。
予選を通じて、コンテは3-5-2 と4-4-2(4-2-4)に適応する選手を見極めてきたはずだが、古巣のユーベ組はともかく、早々に退任を表明したコンテと選手たちとの間に温度差が生じないとも限らない。前代表監督プランデッリがチームマネージメントに失敗し、内部分裂の末にブラジルW杯で喫した惨敗は記憶に新しい。
EURO本大会で、イタリアは世界ランク1位のベルギーと王様イブラヒモビッチのスウェーデン、そしてアイルランドと対戦する。楽なカードは一つとしてない。
「EUROで我々のポテンシャルを最大限に引き出せるよう全力を尽くす。私の全精力をつぎ込む」
転職先をすでに見つけているコンテに失うものはない。とはいえ、新天地挑戦を前に大舞台で無様な姿を晒すわけにはいかないだろう。誰より、ドナドーニを初めとする次期監督候補者たちが、眼を凝らしてその采配を見守ることだろう。