セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
本田圭佑のポーカーフェイスは続く。
客席の「Vai,Honda!」にどう応える。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2016/03/22 11:10
交代後、本田は一瞬だけ悔しそうな表情を見せた。ポーカーフェイスの裏には、逆襲への意志がたぎっている。
チームのボールが、自然と本田に集まる。
早い時間に追いついたことで、ミランと本田は獰猛にゲームの主導権を取りにかかった。
故障明けであまり動けない主将モントリーボの分までケアすべく、本田は中盤の底まで走り回った。ラツィオの実力派ボランチ、MFビリアへ掴みかからんばかりの勢いで猛プレスをかけ、ボールを奪いに行く。
37分には、MFボナベントゥーラのFKがクロスバーを叩いた。
縦横にパスを繋いで崩すこともできれば、高速のカウンターも持つラツィオを相手に、ミランは一歩も引かなかった。
守備の場面では、左サイドに偏るチームの重心バランスを取るため、右から中央へ寄り気味になった本田へボールが集まる。
54分、エリア内でマーカーを引きつけたFWバッカからゴール右前でパスを受けた本田が、タイミングよく左足シュートを放った。しかしボールは大きくクロスバーを越え、万を超える大きな溜息がサンシーロに漏れた。
ミランと本田はめげずに、なおも攻め続ける。69分にはさらなる決定機が訪れた。
右サイドを破った本田が、糸を引くようなクロスをファーサイドへ放つ。ゴール左前に低く飛び込んだMFボナベントゥーラの右足へ、確かにピンポイントで合わせた。
しかし、ジャストミートしたはずの右足ボレーは、不運にもラツィオGKマルケッティの正面に飛んだ。逆転ゴールの決定機は、ライン上で弾き返された。
相手の退場で数的優位を手にするが……。
どうしても2点目が欲しい指揮官ミハイロビッチは、74分にFWバロテッリを投入。
2枚目の警告を受けた相手MFルリッチの退場によって数的有利となった84分には、FWメネズを入れた。
メネズと入れ替えにベンチへ下がったのは、本田だった。黒いウォームジャケットを羽織った10番は、喜怒哀楽を見せることなく、ベンチへ向かうと両脚を伸ばして腰を下ろした。
問題は、ミランの前線に残ったボナベントゥーラと3人のFWたちに、何の怖さもないことだった。彼らは付け焼き刃的に4-2-3-1を組んだが、FWバッカにポストプレーは期待できないし、今のFWメネズには敵の最深部をドリブルで抉る能力はない。FWバロテッリは相変わらず、エリア外から無理なシュートを狙うばかりだ。