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カナダのバスケット史上最高の一日。
ナッシュとカーターが起こした連鎖。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byGetty Images

posted2016/02/28 10:40

カナダのバスケット史上最高の一日。ナッシュとカーターが起こした連鎖。<Number Web> photograph by Getty Images

トロントでのオールスターゲームに登場したスティーブ・ナッシュ。彼の登場に、会場は大歓声に包まれた。

カナダにできた2つのNBAチーム、そしてスター。

 そんなバスケットボール不毛の地が変わるきっかけとなったのが、1995年に2つのNBAチームがカナダに誕生したことだった。

 東のトロント・ラプターズと西のバンクーバー・グリズリーズ。グリズリーズは2001年にアメリカのテネシー州メンフィスに移転することになるが、その分、残ったラプターズはカナダを代表するチームとなった。

 直近5回のNBAドラフトでは9人のカナダ人選手が1巡目で指名されているが、そのうち8人がトロント出身の選手だというのも、まったくの偶然ではない。

 たとえば、2014年ドラフトで1位指名されたアンドリュー・ウィギンズもトロント生まれ。彼が生まれたのは、ラプターズ誕生と同じ1995年だった。彼以外の7人の選手もその前後に誕生しており、それぞれ物心がついたころから地元にNBAチームがあり、NBAのスターを間近で見られる環境で育ってきたのだ。

ナッシュがカナダ人として初めてリーグMVPに輝く。

 そして、そんな彼らを惹きつけたスターが、'98年から2004年までラプターズに所属していたビンス・カーター(現グリズリーズ)だった。当時のカーターは新人王を取り、ダンク・コンテストで優勝し、ラプターズをプレイオフに導いたエース。この頃にカーターを入口にNBAに魅了されていったトロント育ちの子供たちが、最近になってNBAに入る年代に成長してきたというわけだ。

 たとえば、トリスタン・トンプソン(現クリーブランド・キャバリアーズ)もその一人。トンプソンは「こうやってトロント生まれのNBA選手たちが多くなったのは、ビンス・カーターが理由だ」と断言する。

 現在24歳のトンプソンは小学生の頃、父と共にラプターズの試合を観に通ったという。アリーナの上のほうの席から、いつの日かコートでプレーする自分の姿を夢見ていたのだ。

 もう一人、カーターと並んでカナダの子供たちにNBAの世界を身近に感じさせたのはナッシュの活躍だ。'96年にNBA入りしたナッシュが2005年と2006年に2年連続でリーグMVPを受賞したことは、カナダとアメリカの間にあると信じられていたバスケットボールの壁を崩壊させた。自分たちカナダ人でもNBAに入り、MVPになることができる。そう夢見る子供たちが増えた。

【次ページ】 「ビンスとナッシュは誰よりも身近に感じる存在」

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