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カナダのバスケット史上最高の一日。
ナッシュとカーターが起こした連鎖。

posted2016/02/28 10:40

 
カナダのバスケット史上最高の一日。ナッシュとカーターが起こした連鎖。<Number Web> photograph by Getty Images

トロントでのオールスターゲームに登場したスティーブ・ナッシュ。彼の登場に、会場は大歓声に包まれた。

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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 2月12~14日に行われたNBAオールスター・ウィークエンドの期間中、開催地のカナダ・トロントは、タイミング悪く氷点下20度台という記録的な寒波に見舞われていた。しかし、そこはウィットに富んだNBAコミッショナーのアダム・シルバー、その寒波をネタに記者会見でこう語った。

「私は最近、ここオンタリオ州で生まれたジェイムズ・ネイスミス博士が125年前にバスケットボールを考えだしたときの話を読んでいました。その中に、寒い冬の日に若者たちが身体を動かせるようにということでバスケットボールを考案したと書かれていました。だから、屋内で行なう競技を作り出したわけです。この週末、多くの人たちから『寒い』という話が出るたびに、私は『確かに寒いですけれど、私たちのイベントはすべて屋内で行われるので問題なく楽しめます』という話をしています」

 こう言って、シルバー・コミッショナーはトロントの寒波の話題に、さりげなくカナダとバスケットボールの繋がりの強さの話を織り交ぜた。

 シルバー・コミッショナーが語ったように、バスケットボールの競技を考えだしたネイスミス博士はカナダ出身だ。バスケットボールを考案した当時はアメリカのマサチューセッツ州に住んでいたので、バスケットボール自体はアメリカ生まれのスポーツとして知られているが、バスケットボールはカナダにも縁が深い競技だったわけだ。さらに1946年、創設されたばかりのNBAの最初の試合、ニューヨーク・ニックス対トロント・ハスキーズも、トロントで行われているのだ。

実はカナダでバスケットは人気競技ではなかった。

 しかし実のところ、それだけ古くからバスケットボールに関わってきた伝統があり、さらにバスケットボール大国のアメリカの隣国であるにも関わらず、ひと昔前までカナダでのバスケットボールは人気競技とは言えなかった。人気の上では国技のアイスホッケーに遠く及ばず、国の代表チームもあまり強くなかった。

 カナダ人として初めてNBAオールスターに選ばれたスティーブ・ナッシュは、カナダの中では、比較的バスケットボールが盛んな西海岸のビクトリアで育ったが、それでも、「当時('80年代後半~'90年代序盤)はあまり競争のレベルが高くなかったから、いい選手と対戦する機会が少なかった。それだけ選手として成長するのが難しかった。それに、NCAAの大学のコーチが(リクルートのために)見に来てくれることも滅多になかった」と、当時のアメリカとカナダのバスケットボールの違いを語っている。実際、ナッシュに奨学金をオファーした大学も、中堅校のサンタクララ大一校だけだった。

【次ページ】 カナダにできた2つのNBAチーム、そしてスター。

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