クラブの大きな譲歩を引き出したが……。

　たしかに席を立ったのは一部の観衆だが、収容人数の20％以上に相当するのだからそれなりの規模だ。しかも、アンフィールド観衆のサポート熱はプレミア随一。途中でスタジアムを後にしたファンは断腸の思いだったのではないだろうか？　堪りかねての最後の手段だったに違いない。実際、今回ほどのファンによるボイコットは123年間に及ぶクラブ史にも前例がないという。

　その甲斐あって、リバプールのファンは前述した観戦チケットの他、やはり値上げの対象となっていたメインスタンドのシーズンチケットに関しても、869ポンド（約14.4万円）から1029ポンド（約17万円）への値上げを回避した。1シーズン当たり、9ポンド（約1500円）のチケットを計1万枚と、地元校への無料チケットを計1000枚用意するという新たな約束も取り付けた。

　但し、ファンが「完勝」を収めたとまでは言えない。ボイコットを呼びかけた『リバプール・サポーターズ・コミッティー（LSC）』は、クラブとの間でチケット料金新体系に関する協議を1年以上も続けてきた中で、3つの基本要求を掲げていた。その内、対戦相手によってチケット料金が変わる「カテゴリー制」の廃止は実現を見た。若年サポーターの観戦奨励も進められることになった。しかし、肝心の料金値下げには至っていない。

チケットの最低料金が20年前の3倍以上。

　クラブが全く聞く耳を持っていないというわけではない。リバプールは当初の新料金体系発表時にも、観戦チケットの45％が値下げの対象となり、シーズンチケットの64％は価格が据え置かれる点を強調していた。だがこれは、元々高額な観戦席を対象とする「表面的なポーズ」にも近い歩み寄り。庶民、即ちサポーターの大半が最も強く値下げを望むチケット最低料金は値上がりしているケースが多い。

　今季開幕前にも、プレミア20クラブ中11クラブで最低料金が引き上げられた。昨年には、国内インフレ率の3倍の割合でチケット最低料金が値上がりしている状況を英国スポーツ大臣が問題視してもいた。筆者がファンとしてスタンド観戦することもあるチェルシーのスタンフォード・ブリッジでは、1994年には15ポンド（約2500円）だった最低料金がいまや52ポンド（約8600円）という現状だ。

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