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「嫌われてもいいけど、頼られたい」
阪神・金本監督、有言実行の“超変革”。
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2016/01/29 10:30
若いと思われる金本新監督だが、実はセ・リーグ最年長でもある。サラリーマンなら中間管理職にあたる40代監督らの熱い戦いに注目したい。
「ベンチではナチュラルに行こうと思います」
飾らない人だ。
1月9日、大阪市で藤浪晋太郎と臨んだトークショーでは、試合中にベンチで鉄仮面になるか問われ、こう答えている。
「ナチュラルに行こうと思います。作ることなく、特別ね、緩んだ顔とかはしないように。腹が立ったら腹立った顔をして集中してナチュラルにね。作ったって選手は分かります」
試合中、選手は監督の表情を見ているものだとも言う。だからこそ誇張せず、自然体で臨む姿勢なのだろう。偉ぶらず、相手と同じ目線に立って周囲を思いやる。
数年前、ある阪神のOBが体調不良に陥り、普段の仕事に支障をきたしたことがあった。それを聞きつけた金本監督はこう話し掛けたという。
「大丈夫か? いい病院を紹介してやろうか」
かつて'03、'05年の優勝メンバーとして、ともに戦った仲間だった。引退しても、関係は何一つ変わらない。周囲に慕われる理由を垣間見た気がした。
監督の顔色をうかがうイエスマンはいらない。
器量がある人だ。
1月7日の合同スタッフ会議では珍しい光景を見た。金本新体制が発足し、初めて首脳陣が一堂に会していた。西宮市のホテルで会議、そして懇親会を終えると、いつもなら散会するのに、この日は違う。コーチ陣だけが続々とバーへと消えていく。今岡誠、金村曉、高橋建らニューフェイスの顔もあった。金本監督が用意した、即席の“3次会”だった。
指揮官は「俺にとって最強のコーチ陣だと思う。情熱もある。俺に絶対、意見してくれる。俺の意見も聞いてくれる。絶対、勝とうという意志も持ってくれている」と信頼を寄せる。これから1年間、苦楽をともにする間柄だ。ざっくばらんに杯を交わし、思いを1つにする。
「イエスマン」の排除も改革の1歩だろう。近年、コーチ会議では、監督の意思に追随するだけのケースも見られたという。予定調和や馴れ合いなどいらない。だから、首脳陣に対して注文もする。
「意見を言えないコーチはダメ。裸の王様になっちゃう。間違ったことは言ってくれと。俺も意見あるし、方針もある。最後は俺に任せて欲しい、そこは譲ってくれと。失敗したら話し合って、ちゃんと反省して」
また、これまで球団首脳がグラウンドに顔を出すと、急に張り切るコーチもいて、実際に、そんな姿を見苦しく思っている選手もいた。
どこを見て戦っているのか。
勝つために純粋に打ち込めるのか。
金本体制は、本当に必要なものだけを追い求める。