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遠ざかる松山英樹の背中を追う……。
直接対決で直面した石川遼の現実。 

text by

桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2013/07/04 10:30

遠ざかる松山英樹の背中を追う……。直接対決で直面した石川遼の現実。<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

日本人最高順位である48位の松山に対し、「AT&Tナショナル」で予選落ちした石川は140位にランクダウンするなど、世界ランクでもふたりの差は広がっている。

 もしかしたら――と思っていた。

 全米オープンで10位という成績を収めた松山英樹と、出場すら叶わなかった石川遼。それでも実績という面では石川が依然として上である。復調の兆しはあった。米ツアー開幕序盤は予選落ちばかりだったが、2年ぶりに決勝ラウンドに進出したマスターズ以降、石川の状況は好転を見せていた。予選通過も続き、シーズンの目標であるシード権保持に歩みを進めていた。それだけに石川が底力を見せてくれるのではないか、と思っていたのだ。

 だが、その予感が外れたばかりか、2日目を終えた二人の対比は残酷なまでに鮮やかだった。

 予選ラウンドで同組になった松山英樹との直接対決。いやがうえにも高まった周囲の期待と注目は大会開始早々に萎んだ。初日2位で滑り出した松山に対し、石川は最下位でスタートし、まさかの予選落ち。2日間で集まった観衆は前年比1.85倍の計9105人に上ったが、その分、ギャラリーの溜め息も大きかった。

 スポットライトの中心。そこは昨年までは石川の場所だった。

「日本ツアーを守り立てたい」。そんな思いで出場を決めた大会は、石川にとって自身の置かれた現状を痛感させられたものだったに違いない。

スイングスピード、安定性……すべてが松山に敵わない。

 もともと石川は松山のスイングに惚れ込んでいた。スピードがありながらもブレることのない安定した回転軸。「テレビで見ていて『このスイングをする選手には絶対に飛距離で勝てない』と思って、悔しさもありました」。事実、この試合で松山のドライバーショットは石川の5ヤード以上も先にボールを運んだ。目の前で幾度となく繰り返される理想のスイングと、かなわない飛距離。

 その羨望は松山がミスショットをしたとしても変わらなかった。2日目の終盤、松山はショットのタイミングが合わず、フィニッシュでクラブから右手が離れてしまうシーンも多かった。だが石川は「こっちからするとミスショットも悪くない。まっすぐ飛んでるように見える。でも英樹のなかでは何かが違う」と考えていた。ミスの許容範囲が違う――目指すレベルが違っていたことも松山との差を実感する要因となった。

【次ページ】 ライバルに見せた失態で、新パターの使用を決意した。

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