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朝日杯FS、デビュー1カ月でGI制覇。
武の偉業遮ったリオンディーズの鬼脚。 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byKyodo News

posted2015/12/21 11:30

朝日杯FS、デビュー1カ月でGI制覇。武の偉業遮ったリオンディーズの鬼脚。<Number Web> photograph by Kyodo News

一度はエアスピネルが完全な形で抜け出し、圧勝かと思われたが……。

デムーロ「2000mまではイケる」

 騎乗したミルコ・デムーロは、今年4度目のGI勝利となった。「すごい馬です。パワフルで、頭がいい。ずっといい手応えで、直線はちょっと外だったけど、すごく伸びた。今年は素晴らしい年です」

 前走、岩田康誠が騎乗して勝った新馬戦は京都芝内回りの2000mだった。

「今回は1600mで外枠だったので、ゆっくり行こうと思っていた。飛びが大きいので、スタートでダッシュをつけすぎると引っ掛かってしまう。ペースがあまり速くないし、4コーナーでエアスピネルが前にいたので、どうかなと思った」

 そう話すデムーロも、武の記録がかかった一戦であったことはもちろん知っていた。

「豊さんは朝日杯だけ勝っていないと聞いていた。豊さん、ごめんなさい」

 リオンディーズの距離適性に関しては「2000mまではイケる」と言い、「2400mは?」と問われると、「頑張ります」とだけ答えた。

角居調教師「空気を読まなくてすみません」

 管理する角居調教師は「いやあ、空気を読まなくてすみません」と苦笑した。

「前向きな気持ちで走っていくので、できるだけなだめるように調整しました。押して行けば掛かることを、ミルコは返し馬の感触からつかんだのでしょうね。2戦目なので、変な癖だけつかないように乗ってくれればいいと思っていました。何度も実戦を経験した馬との戦いだったので、直線に入っても、どれだけ伸びるかと思って見ていました」

 デビュー前から朝日杯を使うことをイメージしていたわけではなく、新馬戦を勝ったあと、さまざまな要素を考慮してここに向かうことを決めたのだという。

 デビューから29日目でのJRA・GI制覇は、1998年に阪神3歳牝馬ステークスを勝ったスティンガーと並ぶ最速記録。'84年のグレード制導入以降、キャリア1戦の馬が朝日杯を勝ったのは初めてのことだった。そうした舞台に、2000mで新馬勝ちした馬をあえて参戦させた智将の勝利でもあった。今後に関しては、現時点では何も決めていないというが、当然来年のクラシックで、エアスピネルや今週のホープフルステークスに出る馬たちと対決することになるだろう。

【次ページ】 甦った10年前のオークスの記憶と、ディープ。

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