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朝日杯FS、デビュー1カ月でGI制覇。
武の偉業遮ったリオンディーズの鬼脚。
posted2015/12/21 11:30
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Kyodo News
今年の2歳王者決定戦で見ることができたのは、天才騎手の大記録達成ではなく、最強牝馬の血による10年越しのドラマだった。
第67回朝日杯フューチュリティステークス(12月20日、阪神芝外回り1600m、2歳GI)で、史上初のJRA平地GI全制覇を狙った武豊のエアスピネルは2着に敗れた。勝ったのは、2005年に日米のオークスを制したシーザリオを母に持つ2番人気のリオンディーズ(牡、父キングカメハメハ、栗東・角居勝彦厩舎)。シーザリオが、エアスピネルの母エアメサイアをゴール前で首差かわした'05年のオークスを再現するような結果となった。
「3回乗って、今回が一番いい走りだった」と武が言ったように、単勝1.5倍の圧倒的1番人気に支持されたエアスピネルのレース運びは完璧だった。道中は中団で折り合い、直線で先頭に躍り出たときは、後ろをブッちぎるかに見え、スタンドが沸いた。ところが、外から来たリオンディーズにそれ以上の脚を使われ、3/4馬身差の2着に惜敗した。
「勝った馬が強すぎた。こういうところまでお母さん(エアメサイア)に似なくてもよかったのに。初めて似ているところが出てしまいましたね」
エアスピネルも素晴らしい走りだったが。
2着から3着まで4馬身もの差がついたように、エアスピネルもGI馬となるにふさわしいだけのパフォーマンスを発揮したのだが、相手が一枚上だった。
「それでも来年のクラシックに向けて楽しみになりました」
そう話した武の全GI制覇は来年以降に持ち越しになったが、その前に、クラシックでリオンディーズにリベンジすることができるか。またひとつ見どころが増えた。
前半800mが47秒3、後半800mが47秒1。前後半のラップがほぼ同じで、先行した馬も充分余力を残せる流れだった。それを最後方から大外を回って差し切ったのだから、リオンディーズの強さは普通ではない。上がり3ハロンはメンバー最速の33秒3。2番目のエアスピネルが記録した34秒0よりコンマ7秒も速かった。これでまだデビュー2戦目なのだから、末恐ろしい。