オリンピックへの道BACK NUMBER
樋口、白岩ら新たな才能が続々と。
日本女子フィギュア、豊穣の冬到来。
posted2015/12/06 10:40
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
久しぶりの、笑顔だった。
11月下旬に開催されたフィギュアスケートの全日本ジュニア選手権。女子で連覇を果たした樋口新葉は、表彰台の真ん中で、喜びをまっすぐに表した。
樋口はショートプログラムで会心の演技を見せてトップに立つ。
迎えたフリーでは、冒頭、ジュニアグランプリなどで入れていたトリプルルッツ-トリプルループから、トリプルルッツ-トリプルトウループに変更。この3回転のコンビネーションジャンプを決めると、その後は勢いに乗り、持ち味のスピード感あふれる滑りを見せる。後半トリプルフリップこそ成功しなかったが、ミスはその1つだけ、フリーでも122.40のトップに立ち、合計得点189.23の高スコアで、完全優勝を決めた。
「今シーズンでいちばんいい演技でした」
と、樋口。
昨シーズンはジュニアグランプリで2位、優勝の結果を残し、ジュニアグランプリファイナルに進出。ファイナルでは3位で表彰台に立ち、全日本選手権は3位、世界ジュニア選手権でも銅メダルを獲得した。
ジャンプの精度を欠き、苦戦した今季。
脚光を浴びた1年となった昨シーズンとは対照的に、今シーズンは成績だけ見れば納得の行かない大会が続いた。ジュニアグランプリは自身の初戦となったオーストリア大会で5位に終わり、2戦目のクロアチア大会では本田真凜に次ぐ2位となって表彰台で涙を流した。ファイナル進出も逃した。総じて言えば、ジャンプの精度を欠いていた。また、シーズン開幕を前に、腰痛に苦しんだ影響があったのも否めない。
そこから立て直しての全日本ジュニア連覇だ。
「悔しい思いをしてきたので、それが力になりました。全部出し切るつもりでした」
ファイナル進出を逃したあと、全日本ジュニアを照準として、練習に力を注いできた。本人の言葉のとおり、悔しさはあっただろう。
また今シーズンのチャレンジが、時間をかけて形となってきたことも、優勝につながった。