フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ファイナルは日米露から各2人に。
宮原知子GP初優勝と浅田真央の成熟。
posted2015/12/02 14:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
GP6大会の最終戦NHK杯で、並み居るベテラン勢を抑えて初優勝を果たしたのは、17歳の宮原知子だった。
SP、フリーともに大きなミスはほとんどなく滑りきった、安定した技術。だがそれ以上に印象的だったのは、表現に力強さが加わり、目力も出てきて演技にオーラが感じられるようになってきたことである。
特にSPのフラメンコ、『ファイアーダンス』は5週間前のスケートアメリカに比べて格段に切れ味がよくなり、体の小ささを感じさせない堂々とした滑りだった。
「スケートアメリカが終わってから、ジャンプの調子がすごく良かった。ジャンプが安定していたので、自信も少しついたのだと思います」
相変わらず遠慮がちに、小さな声で言葉少なに話すところは変わっていない。だが心なしか、以前よりも声にも少しずつ張りが感じられるようになってきた。
これまで自分の長所はと聞かれると、「そこまで大きく崩れることがないこと」と答えてきた宮原は、確かに正確な技術と安定した演技で昨シーズン、世界選手権で銀メダルを手にした。だがこの大会での彼女は、さらに一皮むけたように見える。
実は表現の面で、宝塚歌劇団出身の講師の指導を受けていたことを告白した。
「主にSPのほうで、フラメンコの腕の使い方などの指導を受けました」という宮原。特に上半身を大きく使うように、意識しているという。
203.11と初の200点超えを果たし、自己ベストスコアを10ポイント近くも更新した。
「昨シーズンは(エレナ)ラジオノワ選手に勝ち、ここでは浅田選手の上にいって、次は誰に勝ちたいですか?」と日本人の記者に聞かれると、こまったように微笑んだまましばらく考えていた宮原選手。
消えるような声で遠慮がちに、「みんなに、です……」と彼女が答えると、記者たちの間から好意的な笑いがもれた。
着実に一歩一歩前に進み続けている宮原知子が、初進出となったGPファイナルでどのような戦いぶりを見せてくれるのか、楽しみである。
初メダルを手にしたコートニー・ヒックス。
サプライズの2位に入ったのは、アメリカのコートニー・ヒックスだった。昨シーズンはカナダとフランスでどちらも4位となり、惜しいところで表彰台を逃していた彼女だが、ここでみごとに初のGPメダルを手にした。
2位だったSPは、「これまでで最高の滑りができた」と嬉しさを表現。
フリーは浅田真央に次いで3位だったが、僅差で総合2位を保った。
「中国杯でも調子が良かったけれど、フリーのウォームアップの最中に靴が壊れる事故があって調子を崩した。今回は準備万端で臨みました」と語った19歳のヒックス。彼女の次の勝負は1月の全米選手権になる。