アメリカ戦の活躍で、4番筒香は誕生した。

　筒香は、台湾での1次リーグでは中田の派手な活躍の陰に隠れてはいたが、実は要所で勝負強く、実戦的な打撃を見せていた。

　メキシコ戦では2回に日本の初安打となる左前安打で中田の2ランを呼び込み、3回には1死満塁から3点目となる右前安打など3安打。2本塁打10得点と打線が爆発し、これまた中田の3ラン、松田宣浩内野手（ソフトバンク）の満塁弾に注目が集まった米国戦でも、実は勝利への道を開いたのは筒香のバットだった。

　小久保監督が筒香を4番に抜擢した決め手は、この米国戦での活躍である。

　特に光ったのは1点目のタイムリー二塁打。緩急をつけて動くボールを低めに集める米国先発のグルーベ投手に各打者がてこずり、2－0とリードを許す状況だった。そこで4回2死二塁、外角の速球を逆らわずに左中間に運んで反撃のノロシをあげたのが筒香だ。動くボールに対してポイントを近くに置き、逆方向に打ち返す。そのことを意識した国際試合のお手本のような一打。しかも2死という重圧のかかる場面でしっかり結果を残したのは、勝負強さという点でも高く評価されるものだった。

　この試合では6回には1死一、二塁から詰まりながらも中前に同点適時打。さらに7回にも2死一、二塁から勝負を決める6点目の中前タイムリーを放っている。他の打者が一気呵成に大振りになるときでも、強引に右方向に引っ張るのではなくセンター中心に打ち返す打撃で勝利に貢献した。

「今日は筒香です」

　試合後の小久保監督はこう語り、派手な3ランを放った中田ではなく、筒香をプエルトリコ戦での4番に指名した。

　信頼と納得の4番だったわけである。

筒香「国際大会でしかわからないこともある」

「国際大会に出た人にしか分からないこともありますし、また自分が成長できたかなというのはあります」

　大会終了後にこう語った筒香は、3位決定戦のメキシコ戦でも2回に左前に安打を放った。

「打ちにいってそこまで甘いコースじゃなかったので、とっさに切り替えたという感じですね。ああいう風にできるのは、技術もちょっとずつ、ついてきているのかなと思います」

　相手投手のレベルも上がるWBCでは、このバッティングができなければ、おそらくいい結果は残せないだろう。そういう意味では2年後にどこまで筒香が技術に磨きをかけてグラウンドに立てるか。大きな楽しみを抱かせる内容だった。

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