サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
決定力不足ではなく、戦術が招く必然。
ハリルのタテ一本槍が消す日本らしさ。
posted2015/11/18 11:30
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Takuya Sugiyama
だらしない、不甲斐ない、と言われてもしかたがあるまい。
意外なほど圧力のあるアウェイゲームだったとしても、不慣れな人工芝だったとしても、FIFAランキング183位のカンボジアに手を焼いたのだ。2015年11月17日の一戦が、周囲を納得させられなかったのは紛れもない事実である。
2-0とW杯予選では史上初となる6戦連続完封を達成したが、対戦相手は格下ばかりだ。クリーンシートを並べることに価値はあるものの、騒ぎ立てるほどのことではない。
ならば長谷部誠、武藤嘉紀、酒井宏樹らをシンガポール戦に続いて起用し、途中出場となった本田圭佑もスタメンで起用するべきだったのか。
現状で考えうるベストメンバーで臨み、ゴールラッシュを展開できれば、誰にとってもスッキリとした試合になっただろう。だが、W杯予選でひと時の満足感に浸ることに、どれほどの価値があるのか。
絶対評価が上がっていったところで、必ずしも望むべき結果を得られないのは、'06年のドイツW杯で、昨夏のブラジルW杯で思い知らされている。
公式戦でなければテストできないことがある。
キックオフ前に整列した11人には、シンガポール戦には出場していない藤春廣輝が左サイドバックで起用され、山口蛍と遠藤航がダブルボランチを組んだ。2列目の左サイドに入った宇佐美貴史は、6月のシンガポール戦以来のスタメンである。
さらに加えて、日本代表では左サイドバックを定位置としてきた長友佑都が、最終ラインの右サイドで起用された。シンガポール戦に続いてこの日も、テストの要素を含んでいた。
カンボジア相手に2-0なのだから、もちろん収穫は少ない。ただ、国際舞台ですでに違いを見せられる選手と、追試の必要な選手が明らかになるのは、決して悪いことではい。公式戦でテストをしなければ分からないことも多く、テストは先送りにするほどふさわしい機会が減っていく。負けられない試合に未知数の選手を試すよりも、いまのうちに見極めておくべきだ。
南野拓実の投入が遅かったのは、悔やまれるところだが。