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高校生が浦和に入団するという意味――。
作陽の10番・伊藤涼太郎が下した決断。
posted2015/10/26 10:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
2015年秋。一人の高校生が、自らの人生において、大きな決断を下した。
岡山県の名門・作陽高校の背番号10・伊藤涼太郎。10月1日、スピードに乗ったドリブルと正確なパスを持つこの高性能アタッカーは、来季から浦和レッズでプロのキャリアをスタートさせることを正式に発表した。
この決断は、茨の道であることは間違いない。今年のJ1ファーストステージの王者であり、リーグ屈指の戦力を誇る浦和レッズ。槙野智章、柏木陽介、西川周作という現役の日本代表選手と、森脇良太、李忠成、武藤雄樹、興梠慎三など日本代表経験者をずらりと揃え、資金力も豊富なビッグクラブだ。
3年前は興梠、森脇、那須大亮らが、一昨年は西川、青木拓矢らが、昨年は武藤、高木俊幸、橋本和、石原直樹、ズラタン、加賀健一と、他チームの主軸級がこぞって加入しており、毎年オフシーズンの主役となっている。
それがゆえに、新人選手からすると、試合に出場することはおろか、ベンチ入りすらも非常に困難になっている。それもあってか過去4年間、浦和には高卒ルーキーがユース昇格者以外でゼロ。ユース昇格者も昨年は2人(斎藤翔太、茂木力也)、一昨年は関根貴大のみで、3年前はゼロだった。
選手層が厚いレッズの厳しい環境こそ望むところ。
伊藤は2011年シーズンに前橋育英高校から加入した小島秀仁以来、5年ぶりの高卒選手の加入となった。
「浦和からオファーを頂いた時は、素直に嬉しかった。正直、周りからは『レッズに行ったら試合に出られなくなる』とか、『選手層が厚いし、厳しい時を過ごすことになる』などと言われたりもしましたが、僕にとってはむしろそういう環境であって欲しいんです。
僕の目標はあくまでA代表に入ることと、世界に出てプレーをすること。レッズでレギュラーを掴むことができれば、そのままA代表という道が見えてくると思っています。僕にとってレッズは『日本で一番A代表に近いクラブ』というイメージなんです。代表経験がある選手の皆さんからいっぱい学びたいし、ここでビビって決断しないのはもったいないと思います」