マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校生離れしたフォークと直球。
ドラフト期待、佐藤世那の球を受けた。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byMasahiko Abe
posted2015/10/21 16:00
独特な腕の振りから繰り出される球で甲子園準優勝、U-18準優勝に貢献した佐藤世那。
この折り目正しさはいったいなんだ。
来た!
速い!
スッと沈む。音もなく、沈む。
音もなく沈んで、構えたミットにおさまる。
これが、すごい。
高校生のフォークなんて、行き先はボールのほうに……そんな<無責任>な行き当たりばったりばっかりなのに、この折り目正しさはいったいなんだ。
<線>でなんか捉えられない。
ピュッと動きまわる虫を左手のミットでとっさにつかむ感覚。一級品の変化球なんて、<点>でしか捕らえられない。
「あいつはストレート、ちょっとすごいですよ」
もっとビックリしたのはストレートだ。
「世那のこと、みんな、フォークのことばかり言うけど、あいつはストレート、ちょっとすごいですよ」
ブルペンの前、佐々木監督との会話の中に出てきた意外な<談話>。そのストレートだ。
いきなり、右打者のインハイ。ビューンと跳ねる。
ミットを逃がして受ける。止めて捕ったら親指をやられる。
今度はインロー。
えいっ! とミットを止めてみせる。
痛てっ!
ミットの中で親指がもげる。
見栄張って痛い思いをする。それも<流し>の醍醐味だ……と、負け惜しみ。
外に構える。
斜めに来た。伸びるカットボール。
左打者が立っていたら、きっと飛びのいて「ストライク!」。
重い、強い、真っすぐ来ない。
全身をミットにして受ける。そうでないと間に合わない。