Jをめぐる冒険BACK NUMBER
J1初残留達成の湘南・曹監督の哲学。
目先の結果より、成長を志した末に。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/10/22 10:40
大学時代に特別指定を受けて以来、湘南一筋の永木亮太。2013年からはキャプテンを務めるまさにチームの支柱だ。
湘南の選手は進んでハードワークしているように見える。
'12年に曹貴裁監督が就任してからは「湘南スタイル」という言葉が定着し、昇降格を繰り返しながらも、アグレッシブなスタイルに少しずつ磨きをかけてきた。
ドイツ代表やバイエルン、ドルトムントを見れば分かるように、よく走りハードワークすることが、世界の潮流なのは間違いない。
もっとも一歩間違えれば、選手たちは“やらされている”状態となり、不満もたまるし、著しく疲弊することにもなる。
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ところが、どうだろう。湘南の選手たちは溌剌とプレーし、自ら進んでハードワークしているように見える。
曹監督「勝ったからといって良いわけじゃない」
選手たちはなぜ、主体的にハードワークできるのか――。
試合後の会見で、そのような質問を投げかけられた曹監督は「プロセス、そこに至るものが重要なんです」と答えた。
「シュートを決めたからといって良いわけじゃない。勝ったからといって良いわけじゃない。負けたからといって悪いわけじゃない。足を止めてシュートが外れて勝ったけど、これはいけないプレー。逆に、リスクを犯して取られたけど、これをやらなければ点が取れないという基準を、どんな時にも選手たちに提示するのが監督の責任だと思っています。それを彼らが自分たちで判断してやれるように、少しなってきたかなと思います」
勝負事だから、勝つこともあれば、負けることもある。目先の勝利を優先するのではなく、自分たちはどうあるべきかに真摯に向き合う。
なぜ、あのとき走るのをやめてしまったのか、なぜ、あの場面でボールを前に運べなかったのか、なぜ、あそこであと少し足を出せなかったのか……。
試合を終えて、胸を張れるプレーをすることが、成長につながっていく。そのスタンスにブレがなければ、結果は後からついてくる――そんな哲学がうかがえた。