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返り咲き目前、ロッシの意外な一言。
9度の王者経験者は、何を語ったか。
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2015/10/17 10:30
日本GPでは2位でロレンソに先着。表彰台の表情も明るかったロッシ(左)。
「残り3戦をどう戦うか?」と問われ……。
その時の質問は「残り3戦をどう戦うか?」というものだった。
対してロッシは、「残り3戦をいっぺんに考えることなんてできない。とにかく次のレースのことしか考えられない。これまで通り1戦1戦、ベストを尽くしていくだけ」と答えたからだ。
1戦1戦頑張るだけ……という言葉は良く耳にするが、「次のレースのことしか考えられない」という言葉は、あまりにもストレートに気持ちを表現していたし、実に新鮮だった。
これまでも天才と呼ばれたライダーたちの名言はたくさんあるが、「次のレースのことしか考えられない」という素直な言葉は、チャンピオン争いをするライダーの心境を見事に表現しているし、9回もチャンピオンを獲ってきたロッシならではの名言だなあと思ったのだ。
18点は、実に微妙な点差である。
それにしても、18点差というのは実に微妙である。ロッシがミスをしてノーポイントに終わり、ロレンソが勝てば逆転というシチュエーションである。
これから3戦、ロッシは先のことは考えられないというが、苦手とする最終戦バレンシアGPでの最終戦決着だけは避けたいのではないか。実際に2006年のヘイデンとの最終戦決着では、まさかの逆転負けを喫している。
そんな苦い経験があるだけに、得意とする今週のフィリップアイランド(オーストラリアGP)、来週のセパン(マレーシアGP)で決着をつけたいのではないか。こういうときに強いレースをするのがスーパースターであり、ロッシにそういうレースを期待しているファンは多い。
ロレンソはマルケスやペドロサとも戦う必要がある。
ロッシの過去9回のチャンピオン獲得では、シーズン前半に勝ち星を重ねてリードを築き、中盤から後半に掛けてその差をキープしながらマジックを減らしていく。そしてタイトルが決まると、残りの数戦で再び勝ち星を増やすというのがチャンピオン獲得のストーリーであった。
一方のロレンソが過去にチャンピオンを獲得したケースは、好スタートからシーズンを逃げ切るというもので、ここまでの接戦は初めての経験だ。
その差18点。「残り3戦に勝てばチャンスはある」とロレンソは語っているが、ロッシがロレンソとの戦いにターゲットを絞っているのとは対照的に、ロレンソはおそらく優勝争いに絡んでくるマルケスもペドロサも相手にせねばならないところにリスクの大きさを感じてしまう。