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バイクに乗っても乗らなくても速い!
若き王者マルケスの美しき全力疾走。
posted2015/04/19 10:30
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
最高峰MotoGPクラスで総合3連覇の期待が寄せられるマルク・マルケスが、またしても痛快なドラマを見せてくれた。
それはおそらく、マルケスでなければ出来ないこと。天衣無縫と言っていい発想と行動力に、ただただ、あ然とさせられた。終わって見れば、拍手喝采の嵐。マルケスはすごいなあと誰もが思ったことだろう。
4月上旬、米国テキサス州のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で開催された第2戦アメリカズGPの予選中の出来事である。
最終コーナーを立ち上がってホームストレートに差し掛かったマルケスは、マシンのウォーニングランプが点灯したため、すかさずエンジンを止めて、コンクリートウォールにマシンを立てかけた。
そのとき誰もが、ああ、これでマルケスのPPはなくなったなあと思ったはずである。
しかし次の瞬間、テレビカメラが捉えたのは、コンクリートウォールを乗り越えて、レプソル・ホンダのピットに向けて全力で走り出すマルケスの姿だった。その距離、約200m。
その一部始終をテレビカメラが追う。それを見たチームスタッフは、スペアマシンのエンジンを掛けてマルケスの到着を待つ。ピット到着後、そのマシンに跨って飛び出したマルケスは、正真正銘ラストチャンスの最後のアタックでPPタイムを叩きだしてしまったのだ。
2本目のアタックに入ろうとした時、トラブルが……。
予選時間は15分。通常は2本の新品タイヤを使い、2回のアタックを行なう。
COTAで2年連続でポール・トゥ・ウインを達成しているマルケスは、フリー走行でトップタイムをマーク。予選セッションの1回目のアタックでも最速ラップをマークしていた。
しかし、1本目のアタックで限界を探った他の選手たちは、2本目のアタックで当然のようにタイムを更新する。
それはマルケスも同じなのだが、その2本目のアタックに入ろうかという周回にトラブルは起きたのだ。