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ヤクルト躍進の陰にユニフォーム!?
“優勝請負”デザイナーの仕事術。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/12 10:40
館山昌平が復帰初勝利を上げた時着ていたのがこの燕パワーユニフォームである。
優勝に導いたデザインとは?
大岩さんがユニフォームをデザインしたプロ野球チームはもう一つある。前述のホークス『玄界灘ブルー』がそうだ。しかし2009年のホークスは前年の最下位から挽回はしたものの、シーズンを3位で終えた。
デザインの神通力は、幻なのだろうか。大岩さんが言う。
「ソフトバンクの時だけはコンペでした。コンペになると、デザイナーは締切までの短い時間で自分の案が選ばれることを最優先に考えてデザインせざるをえません。一方で西武と楽天の時は、1年前から声をかけていただき、じっくりと準備する時間がありました。球団の関係者やファン、地元の方の声を集め、そこに野球知識検定を100点満点で合格した自分の知識を重ねてデザインに取り組むことができたんです。要はコンペで『自分が勝つこと』を目指したデザインと、時間をかけて『チームが勝つこと』を目指したデザインの違いなのではないかと自分では思っています。もちろんコンペにはコンペのいいところもありますし、あくまで僕が過去の仕事を比較して感じたことに過ぎないんですけどね……。あと、西武と楽天では、ユニフォームだけではなく、イベントのロゴなども含めて1年間がっつり関わらせていただいたのも共通点です。そうした点も含めて、デザインで貢献できる部分が大きかったのかな、と……」
球団とファンをつなぐコミュニケーションツールに。
大岩さんに最初からそうした考えがあったわけではない。ホークスのコンペで、インターネットによるファン投票を経て自身の案が採用された時は、素直にガッツポーズをして喜んだ。だが、イーグルスの快進撃がデザインの力を再認識させる契機になった。
「楽天には震災からの復興という明確なテーマがあって、何百万人もの人々のベクトルが同じ方向で一致しているという稀有な状況でした。そうした中で、TOHOKU GREENでは東北6県を6枚の葉で表現したロゴをデザインし、それがパ・リーグ優勝ロゴで6枚のチャンピオンフラッグとなり、日本一の記念ロゴでは楽天の飛躍と東北の復興への願いを込めた6枚の羽になった。ロゴとともにそれぞれに込めたメッセージを載せたツイートが600回以上リツイートされた時は、デザインがアイコンとなり、球団とファンをつなぐコミュニケーションツールになりうるんだということを改めて実感しました」
そして今年、大岩さんのデザインがみたび奇跡を起こそうとしている。セ・リーグを14年ぶりに制したスワローズである。