One story of the fieldBACK NUMBER
「晋太郎! ウメ! 逃げるな!」
福留孝介が阪神で本当に欲したもの。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byNaoya Sanuki
posted2015/10/08 11:20
規定打席以上の選手で、阪神では鳥谷に次ぐ打率を残した福留。
「俺たちは、やるしかないから」
事実上、リーグ優勝が消滅した9月23日、巨人戦。福留は3回に同点打を放った。一塁へ走りながら痛むはずの右拳を握っていた。優勝にかける執念がほとばしった。最後まで100%のフルスイングはできなかった。それでも、勝ちたかった。バット以外でもあがき、もがき、優勝に手を伸ばした。
欲しいものは手に入らなかった。
だが、戦いはまだ終わっていない。和田監督の退任が決定的となり、喧騒の中でポストシーズンを戦わなくてはならない。
「俺たちは、やるしかないから」
頂点への道は閉ざされていない。失意を闘志に塗り替え、戦いの舞台へ。福留は最後まで猛虎の先頭に立つ覚悟だ。