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優勝目前のヤクルトの贅沢な悩み。
バレンティンをどう起用すべきか?
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/09/24 15:30
広島戦での内野ゴロ。必死に一塁へ駆け込むバレンティンだが……。
バレンティンがいなくとも優勝できる!?
バレンティンがスタメンを外れた23日の広島戦でも、山田と畠山の3、4番コンビが黒田博樹を攻略して6-0と快勝した。こうした状況を考えるに、バレンティンの復帰はもしかしたら、あふれそうなコップに水をつぎ足すようなものと言えるのかもしれない。
波に乗れば爆発的な打棒を発揮する一方で、乗り切れなければ調子を取り戻せないままレギュラーシーズンを終え、CSに突入する可能性もある。存在感を見せたのが最初の2試合だけという現状では、復帰後に組んだ、雄平を6番に下げて5番にバレンティンを置く打線が機能するかどうかも判断がつかないままだ。
1点が重みを増すシーズンの佳境にあっては、守備力にも気を配る必要がある。20日の阪神戦で、何でもない打球の処理に手間取って失点のきっかけを作るなど、守備の緩慢さはバレンティンを起用する以上は覚悟しなければならない要素。今、「守」を犠牲にしてまで「打」を高める必要があるのかどうか、その塩梅は難しい。
優勝への「最後のピース」となるのか?
ようやく実質的な開幕を迎えたばかりのバレンティンの先発起用にはどうしてもギャンブル的要素がつきまとうのだ。そうなると、図らずも両足の違和感からスタメンを外れた広島戦のように、終盤での代打としてベンチに置く選択肢も有力になってくるのではないか。仮にダミーだとしても、60本塁打のレコードホルダーがネクストバッターズサークルに現れるだけで相手バッテリーに与える威圧感は大きいだろう。
もう一つ気がかりなのが“温度差”だ。
「緊迫感のある中でやりがいを感じている」と話す山田を筆頭に、若い選手たちが14年ぶりのリーグ優勝に手が届く位置までチームを引き上げてきた時間をバレンティンはリハビリに費やした。不在中の借りは結果で返すしかないが、復帰直後の2試合の活躍で安心したかのように表情はやわらかい。生来が陽気な性格とはいえ、ともすれば“緩い”と見えるカリビアンの態度は、首位争いの緊張感とは対極にある。
バレンティンの復帰は、優勝への「最後のピース」とも言われた。だが、それをどこに、どうはめこむのがベストな策なのか――。
贅沢な悩みかもしれないが、気まぐれなピースでもあるだけに、真中満監督が出す答えに注目したい。